要点:施工管理の賃金を、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和6年)の職種区分「建築技術者」「土木技術者」の公的数値で確認する方法を解説します。月額給与・年間賞与・年齢階級別の観測傾向を示し、統計値を個人の収入に読み替えず、求人票で自分の条件を確認する視点まで整理します。
- この記事の結論
- 前提:既存記事との住み分け
- 賃金構造基本統計調査の「建築技術者」「土木技術者」
対象読者:設備工事会社の経営者・採用責任者
この記事の結論
施工管理の賃金を公的統計で確認する場合、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」では職種区分「建築技術者」「土木技術者」が対応します。令和6年調査では、月額のきまって支給する現金給与額が建築技術者434.7千円・土木技術者405.2千円、年間賞与その他特別給与額が1,200.0千円・1,102.9千円と観測されています。重要な前提は2つです。第一に、統計の職種区分賃金は産業構造上の平均値であり、個人の求人票の給与や実際の支給給与とは別物であること。第二に、調査上の区分名は「建築技術者」「土木技術者」であって「施工管理」という区分は存在しないため、引用時は必ず調査名・年度・区分名をセットで明記する必要がある、という点です。
前提:既存記事との住み分け
施工管理の収入をテーマにした記事は本サイトに2系統あります。
- 「施工管理の年収はいくら?収入を決める要素と求人票の確認方法」=個人が求人票で自分の条件を確認する方法
- 「施工管理が採れない本当の理由」=採用難の構造を扱った記事
本記事(378)は、公的統計の構造と公表値を読むための記事です。「自分の適正年収はいくらか」といった断定をする記事ではなく、公開されている公的データの水準感を掴み、そのうえで個々の求人票の条件確認につなげるための材料を提供します。
賃金構造基本統計調査の「建築技術者」「土木技術者」
賃金構造基本統計調査は厚生労働省の基幹統計で、事業所標本調査により労働者の賃金構造を明らかにします。令和6年調査(2025年3月公表)の職種別表では、建設関連の技術者区分として「建築技術者」「土木技術者」が集計されています。
区分名について正確を期すために書いておくと、この2つは調査の職種区分の表記そのものです。施工管理業務に従事する人の多くはこの区分に含まれると考えられますが、区分の定義と「施工管理」という職務名が一致する保証はなく、監理技術者などの資格の有無とは無関係の分類です。数値を引用する際は「令和6年賃金構造基本統計調査の建築技術者区分」という形で、区分数値であることを明示してください。
令和6年調査・職種(小分類)別表・企業規模計(10人以上)・産業計に基づく主な値は次のとおりです(e-Stat公表の統計表から確認)。
| 項目 | 建築技術者 | 土木技術者 |
|---|---|---|
| きまって支給する現金給与額(月額・男女計) | 434.7千円 | 405.2千円 |
| うち所定内給与額(月額) | 387.1千円 | 368.6千円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 1,200.0千円 | 1,102.9千円 |
| 平均年齢 | 43.6歳 | 46.0歳 |
| 平均勤続年数 | 12.9年 | 14.8年 |
| 超過実労働時間数(月平均) | 17時間 | 11時間 |
| 労働者数 | 412,760人 | 308,620人 |
調査では月額と年間賞与を別々に公表しているため、年間の水準を試算する場合は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」という計算式を明示する必要があります。この式で試算すると、建築技術者は434.7千円×12+1,200.0千円=6,416.4千円(約642万円)、土木技術者は405.2千円×12+1,102.9千円=5,965.3千円(約597万円)となります。これらは本記事による試算値であり、平均年齢43.6歳(建築)・46.0歳(土木)の労働者層の平均構造から得た参考値です。特定の個人への給与約束として読む数値ではありません。
性別・規模を分解すると見える傾向

同じ令和6年調査を性別に分解すると、次の値が観測されます(いずれも企業規模計・産業計)。
| 区分 | 男(月額/年間賞与/人数) | 女(月額/年間賞与/人数) |
|---|---|---|
| 建築技術者 | 450.7千円/1,256.2千円/357,180人 | 331.8千円/838.8千円/55,580人 |
| 土木技術者 | 411.9千円/1,122.3千円/290,390人 | 298.5千円/792.5千円/18,230人 |
また、建築技術者(男)を年齢階級別に見ると、月額きまって支給する現金給与額と年間賞与は次のように推移しています(同調査・職種(特掲)、性、年齢階級別表・企業規模計)。
| 年齢階級 | 月額(千円) | 年間賞与(千円) | 年収試算 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 285.9 | 463.8 | 約389万円 |
| 25〜29歳 | 358.8 | 1,022.1 | 約533万円 |
| 30〜34歳 | 422.3 | 1,186.3 | 約625万円 |
| 35〜39歳 | 456.1 | 1,407.4 | 約688万円 |
| 40〜44歳 | 486.5 | 1,563.9 | 約740万円 |
| 45〜49歳 | 513.3 | 1,482.8 | 約764万円 |
| 50〜54歳 | 519.1 | 1,700.6 | 約793万円 |
※年収試算は前述の計算式による本記事の試算値。
ここから観測できるのは、若手層から40代にかけて月額・賞与がともに積み上がる構造があること、土木技術者は建築技術者より平均年齢・勤続年数が高い構造であること、といった分布の傾向です。「30代なら必ず625万円になる」といった読み替えはできない、というのが統計の正しい使い方です。残業時間の平均値も含まれているため、残業の少ない働き方をする場合の水準とは乖離します。
統計値と求人票の給与は別物である
繰り返しになりますが、ここがこの記事で最も伝えたい点です。
- 賃金構造基本統計調査の値は、在職者の平均的な賃金構造を示すものであり、求人市場に提示される条件ではない
- 求人票の給与は「基本給+各種手当+残業代の扱い」で構成され、統計の区分平均とは内訳も母体も異なる
- 実際の支給給与は、個々の会社の賞与実績・残業量・手当設計で決まる
したがって、公的統計が答えるのは「公開データ上の水準感と構造」までです。転職や就職の判断では、その水準感を前提にしたうえで、個々の求人票の内訳(基本給と手当の区分、残業時間の目安、賞与の前年度実績)を確認する必要があります。確認項目の具体的なリストは「施工管理の年収はいくら?収入を決める要素と求人票の確認方法」に譲ります。
また、統計上の平均賃金が上昇傾向であっても、それが直ちに特定の会社の給与改定や個人の昇給を意味しません。観測された傾向として捉え、判断材料のひとつに置くのが適切です。
採用側の視点:施工管理採用難との関係
採用する側にとって、この統計が示すのは「建築・土木技術者区分の労働者数(建築412,760人・土木308,620人、企業規模計10人以上)」と年齢構造です。平均年齢の高さや若手層の厚みは、採用市場の観測材料になります。ただし、統計の労働者数は在職者の集計であり、転職市場に流出する人数とは別物です。採用難の構造(求人倍率だけでは説明できない部分)については「施工管理が採れない本当の理由|求人倍率が高いだけでは説明できない採用難」で解説しています。
労務単価に「施工管理」区分は存在しない:隣接職種の単価表で押さえる
建設工事の積算で使うもうひとつの公的指標が、国土交通省の「公共工事設計労務単価」(令和7年3月適用・所定労働時間内8時間あたりの日額)です。ここで押さえておきたいのは、この単価表の職種区分(47都道府県・51職種)に「施工管理」は存在しないという点です。公表されているのは、電工・配管工・ダクト工・設備機械工といった現場で直接施工に従事する職種(直接工)が中心で、施工管理技術者のような管理職員の人件費は、公共工事の積算構造上、現場管理費側で扱われます(同単価の注記でも、法定福利費等は「積算上、現場管理費等に含まれている」とされています)。
したがって、「施工管理の賃金」を公的データで見る場合は、本記事で扱った賃金構造基本統計調査(建築技術者・土木技術者区分)が基本になります。そのうえで、隣接職種の労務単価を押さえておくと、現場人件費の環境変数として水準感を持てます。設備工事に関連する職種の地域別の値を抜粋すると、次のとおりです。
| 都道府県 | 電工 | 配管工 | ダクト工 | 設備機械工 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 27,600 | 25,500 | 25,200 | 28,500 |
| 宮城県 | 28,200 | 27,700 | 24,600 | 27,200 |
| 埼玉県 | 29,300 | 27,100 | 29,200 | 27,700 |
| 千葉県 | 29,700 | 27,700 | 28,900 | 27,800 |
| 東京都 | 32,600 | 28,600 | 29,600 | 28,000 |
| 神奈川県 | 29,800 | 26,900 | 28,300 | 27,800 |
| 愛知県 | 26,400 | 26,100 | 27,100 | 30,700 |
| 大阪府 | 26,600 | 27,200 | 26,100 | 28,000 |
| 兵庫県 | 25,100 | 24,400 | 25,700 | 28,000 |
| 広島県 | 24,700 | 23,600 | 22,800 | 27,700 |
| 福岡県 | 26,500 | 24,600 | 24,700 | 28,100 |
| 沖縄県 | 21,600 | 21,800 | 21,300 | 24,500 |
※ 出典は国土交通省「令和7年3月から適用する公共工事設計労務単価」の職種別都道府県別単価表PDF。単位は円/日で、公表値の一部(12都道府県×4職種)を抜粋したものです。
これらの単価は直接工の積算基準であり、施工管理の給与水準と直結するものではありません。ただし、労務単価の年度ごとの引き上げ幅(令和7年3月適用では全国全職種の加重平均値が24,852円)は、工事費全体の人件費環境を観測する材料になります。職種別単価と歩掛(人工/m)を組み合わせて労務費を積算する実務は「電気工事の歩掛表はどう使う?公共工事標準歩掛と民間お見積りで乖離を防ぐ実務」で解説しています。施工管理側の給与情報の公開状況は「施工管理の給与情報、公開されている会社は多い?観測と確認の方法」、電気工事士側の賃金統計の読み方は「電気工事士の賃金を公的統計で見る」を参照してください。
よくある質問
Q. 調査の「建築技術者」は施工管理者のことですか?
正確には異なります。「建築技術者」「土木技術者」は賃金構造基本統計調査の職種区分の表記です。施工管理業務に従事する人がこの区分に含まれるケースが多いと考えられますが、区分の定義が「施工管理」という職務名と完全に一致する保証はありません。引用時は区分名をそのまま記載し、「施工管理の賃金」への読み替えは控えめに書くのが安全です。
Q. 建築技術者の年収641.6万円という数字は正しいですか?
令和6年賃金構造基本統計調査の男女計・企業規模計(10人以上)の値(月額434.7千円、年間賞与1,200.0千円)に「月額×12+年間賞与」の計算式を適用した試算値として、6,416.4千円(約642万円)が導かれることを本記事で原典データから確認しています。ただし、これは平均年齢43.6歳の労働者層の平均構造値からの試算であり、個人の年収を約束する数値ではありません。式と母数を明示せずに数字だけ引用する使い方は避けてください。
Q. 自分の適正年収をこの統計から計算できますか?
できません。統計は平均構造を示すものであり、あなたの年齢・勤続・地域・残業量・会社の給与制度を反映しません。公開求人市場上の比較レンジの把握にとどめ、自分の条件は求人票の内訳(基本給+手当+残業の目安+賞与実績)で確認するのが確実です。
まとめ
- 施工管理に対応する統計上の区分は「建築技術者」「土木技術者」。区分名は調査の正確な表記で使う
- 令和6年調査の月額は建築技術者434.7千円・土木技術者405.2千円、年間賞与は1,200.0千円・1,102.9千円(企業規模計・産業計)
- 式明示のうえ試算すると約642万円/約597万円。これは平均構造からの参考値であり、個人への給与約束ではない
- 統計値は求人票の給与・実際の支給給与とは別物。水準感の把握にとどめ、条件確認は求人票で行う
参考文献
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」結果の概要: https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou_a.html
- e-Stat「賃金構造基本統計調査」令和6年統計表(第1表職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)/第7表職種(特掲)、性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)): https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450091&tstat=000001011429&tclass1=000001224440
- 令和6年賃金構造基本統計調査結果の概況(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html
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