要点:クレーム対応を速くしても件数は減りません。発生源を期待とのずれ・伝達の失敗・実際の不備の3つに分け、事前に潰せるものから減らす手を整理しました。
- この記事の結論
- 対応品質の改善は、件数削減ではありません
- こんな状態になっていませんか
対象読者:各事業部門の業務改善・効率化推進担当者
この記事の結論
- 対応を速くしても件数は減りません。速さは満足度に効き、件数には効きません
- クレームの発生源は3つ。期待とのずれ、伝達の失敗、実際の不備です
- 最も多いのは1つ目で、発生前に潰せる種類です。対応部署だけでは減らせません

クレームを減らすためには、発生源を理解し、全社的な対策が必要です。
※ この記事は 生産性が上がらない本当の理由 で挙げた3つの論点のうち、「測っていない業務がある」を掘り下げたものです。
対応品質の改善は、件数削減ではありません
クレームが増えると、対応の改善が議論されます。初動を速く、担当を増やす、エスカレーションの基準を明確に。
これらはすべて正しい取り組みです。ただし効くのは起きた後であって、起きる前ではありません。
件数を減らすには、発生源に手を入れる必要があります。そして発生源の多くは、対応部署の外にあります。
こんな状態になっていませんか
- 対応履歴は残っているが、内容が分類されていない
- 同じ趣旨のクレームが、繰り返し別の担当者に届いている
- 「お客様のご理解が不足していた」で終わっている案件がある
- 発生部署と対応部署が違い、情報が戻っていない
- 件数は集計しているが、原因別の内訳が出せない
最後の項目が該当するなら、減らす議論はまだ始められません。内訳が無ければ、どこに手を打つべきか決められないからです。
発生源を3つに分ける
発生源1:期待とのずれ
提供したものは仕様どおりだが、相手の想定と違った。
- できると思っていた機能がなかった
- 納期の認識が違った
- 費用に含まれる範囲の理解が違った
特徴:最も件数が多く、事前の情報提供で潰せます。
打ち手:契約前・購入前に、できないこと・含まれないことを明示します。
発生源2:伝達の失敗
決まっていたことが、相手に届いていなかった。
- 変更の連絡が担当者止まりだった
- 案内は送ったが読まれていなかった
特徴:こちら側に記録が残っているため、「伝えたはず」で終わりがちです。
打ち手:伝えた記録ではなく、届いた確認を運用に入れます。
発生源3:実際の不備
こちらの誤りや不具合。
特徴:件数は少ないが、影響が大きい。
打ち手:再発防止は 同じミスが繰り返される会社の共通点 の4層で考えます。
発生源別の打ち手と担当部署
| 発生源 | 想定される多さ | 打ち手 | 手を打つ部署 |
|---|---|---|---|
| ① 期待とのずれ | 最多 | 事前に「できないこと」を明示 | 営業・広報 |
| ② 伝達の失敗 | 中 | 届いた確認を運用に入れる | 全部署 |
| ③ 実際の不備 | 少 | 検知の仕組みを作る | 制作・開発 |
表の右列を見てください。①と②の担当は、対応部署ではありません。 クレーム削減をカスタマーサポートの目標にすると、構造的に達成できない目標を設定することになります。
「できないこと」を先に言うほうが、結果的に減る
発生源①への打ち手は、事前に対象外を明示することです。
これは営業上、抵抗が大きい提案です。売る前にできないことを言うのは損に見えます。しかし、期待とのずれによるクレームは対応工数・信頼の毀損・解約という形で後から回収されます。
先に線を引くことの効果は、コスト削減はどこから手をつけるか で扱った「削ると高くつく費用」と同じ構造です。短期では損に見え、中期では得になります。
分類できていない履歴は、資産になりません
対応履歴が残っていても、分類されていなければ傾向は出ません。
必要な項目は多くありません。発生源(①②③)・対象(商品/サービス名)・初回か再発かの3つで足ります。この3項目があれば、翌月には「①が7割で、そのうち半分が同じ商品」といった内訳が出ます。
内訳が出れば、手を打つ場所が決まります。何も測られていない業務が改善されない理由は 可視化しても改善しない理由 と同じで、担当が決まらないためです。
よくある質問(FAQ)
Q1:一次対応を自動化すれば件数は減りますか。
A:対応の負荷は減りますが、件数は減りません。 自動化が効くのは、繰り返される定型的な問い合わせへの応答です。発生源①②③のどれにも手を入れていなければ、発生数は変わりません。負荷軽減と件数削減は別の目標として扱ってください。
Q2:「できないこと」を明示すると、受注が減りませんか。
A:短期では減ることがあります。ただし減るのは、もともと期待とずれていた案件です。その案件は受注しても、対応工数と解約という形で戻ってきます。判断は、受注数ではなく最終的な収支で行ってください。
Q3:発生部署に情報が戻りません。
A:戻す経路と担当を決めてください。「共有する」ではなく、月次で誰が誰に何を渡すかまで決めないと運用されません。決め方の考え方は 会議が多すぎる会社の共通点 の議事録3項目と同じです。
「対応を速くすれば件数は減る」という反論にどこまで答えるか
ここまでの説明に懐疑的な方もいるはずです。その反論のうち、最強の形はこうです。
「初動が速ければ顧客の怒りは収まり、再発の連絡も減るはずだ。発生源の分析に時間をかけるより、対応人員を増やすほうが目に見えて効くのではないか」
この反論は、私たちも半分は正しいと考えます。対応の速さを軽視すべきではありません。実際の運用で私たちが推奨するのは、次の3点です。
- 速さと件数を別目標にする: 速さは満足度、発生源対策は件数の指標に結び付けます。混ぜたままでは、どちらが効いたか検証できません。
- 分類は3項目で始める: 発生源と対象と再発有無だけを記録します。この手間を惜しむと、翌月の内訳が出ません。
- 手を打つ部署を間違えない: 期待のずれは営業と広報、伝達の失敗は全部署が担います。対応部署の目標に件数削減を載せないことが条件です。
速さの改善は「起きた後」の仕事であり、件数の削減は「起きる前」の仕事です。両輪で回せば、上記の懸念は現実のものになりません。
まとめ
- 対応の速さは満足度に効きます。件数には効きません
- 発生源は3つ。最多は「期待とのずれ」で、事前の情報提供で潰せます
- ①と②の担当は対応部署ではありません。目標設定を間違えないでください
- 履歴は発生源・対象・再発の3項目で分類すると、翌月には内訳が出ます
まず直近1ヶ月の対応履歴を、3つの発生源に振り分けてみてください。
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問い合わせ対応そのものを仕組みで受け止める設計と、その失敗例・成功例はこちらにまとめています。
参考文献・出典
- 令和8年版 情報通信白書|生成AIの業務利用状況 – 総務省, 2026年7月
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発生源の分類と、どの部署が手を打つべきかの整理からご相談いただけます。
フルスクラッチ開発との単純比較ではなく、自社標準の積算(直請・再利用前提)との比較で費用を抑える設計です。※削減率は案件の要件・既存資産の流用可否により大きく異なり、特定率を保証するものではありません。積算前提は料金シミュレーター・/price-list/の算定条件をご確認ください。自社の規模や自動化したい業務を選択するだけで、想定開発費用と手作業による工数削減効果をその場でシミュレーションできます。