要点:ビルメン・設備管理・ビル管理の人手不足は人口動態として確定した流れです。建設業就業者478万人・55歳以上36.6%の構造と、ビル施設管理職の求人倍率1.03倍、都道府県別0.25〜2.83倍の格差を実数で解説します。
- 1. 建設業全体の就業者は478万人で底打ち、高齢化だけが進んでいる
- 2. ビル施設管理職の求人倍率は全国平均1.03でも、地域差は0.25〜2.83
- 3. 母数15.7万人・平均年齢は地域により44〜57歳
対象読者:設備工事会社の経営者・採用責任者
結論: ビルメン・設備管理・ビル管理と呼び名は違っても、この人手不足は「人口動態として確定した流れ」です。建設業全体の就業者は478万人で横ばいになり、55歳以上が36.6%を占めました。一方でビル施設管理職の求人倍率は全国平均1.03でも、都道府県別では0.25〜2.83と10倍以上の格差があります。つまり「採れません」の内実は会社ごとにまったく違い、統計の読み方を変えれば打ち手も変わる、というのが本稿の主張です。
本稿で使う数値はすべて公的統計の加工データで、出典と算出定義を各表に明記しています。
1. 建設業全体の就業者は478万人で底打ち、高齢化だけが進んでいる
最初に、ビルメン人手不足を語る前提となる建設業全体の数字を6年分確認します。
| 年 | 就業者数 | 30代未満 | 30代未満シェア | 55歳以上 | 55歳以上シェア |
|---|---|---|---|---|---|
| 2020 | 494万人 | 58万人 | 11.7% | 177万人 | 35.8% |
| 2021 | 485万人 | 58万人 | 12.0% | 171万人 | 35.3% |
| 2022 | 479万人 | 56万人 | 11.7% | 172万人 | 35.9% |
| 2023 | 483万人 | 56万人 | 11.6% | 177万人 | 36.6% |
| 2024 | 477万人 | 56万人 | 11.7% | 175万人 | 36.7% |
| 2025 | 478万人 | 57万人 | 11.9% | 175万人 | 36.6% |
出典: 総務省「労働力調査」年次平均および国勢調査に基づく年齢構成の加工値(原表は単位「万人」のため人数へ換算)。AIGENT ACEデータ資産 v_workforce_age(建設業・全国、各年 src_f2f774646fc9c2a2 〜 src_31d6adbde02be5cf)。
読み取れる事実は3つです。
- 就業者数は477〜494万人のレンジで底打ち。2020年比で約16万人減のまま戻っていません。
- 55歳以上シェアは6年で約0.8ポイント上昇し36.6%。数年以内に4割に届く水準です。
- 30代未満は一貫して11〜12%。若手の流入が増えていないため、高齢層の退職がそのまま供給不足になります。
この「流入固定・流出加速」の構造は、ビルメン個社の努力では反転できません。反転できない前提で、次に自社の採用市場を見る必要があります。
2. ビル施設管理職の求人倍率は全国平均1.03でも、地域差は0.25〜2.83
厚生労働省の一般職業紹介状況(job tag掲載・令和7年度)に基づくビル施設管理職(職業分類95)の実数です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 全国の有効求人倍率 | 1.03倍 |
| 全国の求人賃金 | 25.0万円 |
出典: 厚生労働省職業安定局の求人倍率・求人賃金(令和7年度、job tag掲載値)。AIGENT ACEデータ資産 v_labor_supply(src_0273a579368d533a)。
求人賃金25.0万円は求人票に示された月額賃金で、働く人の平均年収ではありません。基本給・宿直手当・資格手当・賞与を分けて確認する方法は「ビルメンの年収・給料を求人賃金の実数から確認する」で整理しています。
全国平均は「1人に1.03件」のほぼ均衡に見えます。しかし都道府県別に見ると、市場は分断されています。
| 区分 | 都道府県 | 求人倍率 | 求人賃金 | 就業者数 | 平均年齢 |
|---|---|---|---|---|---|
| 倍率最高 | 東京都 | 2.83倍 | 27.2万円 | 13,290人 | 45.6歳 |
| 2位 | 愛知県 | 2.77倍 | 26.9万円 | 8,670人 | 47.4歳 |
| 3位 | 島根県 | 1.82倍 | 21.3万円 | 750人 | 44.6歳 |
| 倍率最低 | 埼玉県 | 0.25倍 | — | 10,530人 | 49.3歳 |
| 下位2 | 千葉県 | 0.30倍 | — | 9,920人 | 48.3歳 |
| 下位3 | 滋賀県 | 0.33倍 | — | 1,950人 | 44.4歳 |
出典: 厚生労働省職業安定局(令和7年度、job tag掲載値)・国勢調査(令和2年)による就業者数の加工値。AIGENT ACEデータ資産 v_labor_supply(src_0273a579368d533a)。賃金の「—」は当該県の求人賃金が非掲載のため。
倍率の読み方の注意。求人倍率が高い=売り手市場=採用が楽、ではありません。倍率2.83倍の東京は「求職者1人を他社と奪い合う」市場、倍率0.25倍の埼玉は「求職者4人に対して求人1件」の過剰供給市場です。つまり:
- 東京・愛知型: 求人は出ているが人が足りない → 条件面・情報開示面での競争が必須
- 埼玉・千葉型: 求職者はいるが求人が少ない → 逆に言えば「求人票・採用情報の質」で相対的に簡単に上位に立てる市場
同じ「ビルメン人手不足で採れない」でも、この2つでは打ち手が逆になります。自社県の倍率を最初に確認することが、採用設計の第一步です。
3. 母数15.7万人・平均年齢は地域により44〜57歳
ビル施設管理職の母数と年齢構造も確認します。
- 都道府県合計の就業者数は156,720人(令和2年国勢調査の加工値・47県合計)。建設業全体478万人の約3%という小さな母数の職種です。
- 平均年齢: 東京都45.6歳に対し、鳥取県は57.4歳、秋田県54.7歳、青森県54.2歳。尾張・首都圏の大都市と地方では、10歳以上の世代差があります。
出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和7年)および国勢調査(令和2年)の加工値。AIGENT ACEデータ資産 v_labor_supply(src_0273a579368d533a)。
鳥取県の平均57.4歳は、10年以内に現場世代の大半が退職年齢に達することを意味します。地方のビル管理・設備管理業務では「採用の問題」より先に「引き継ぎの問題」が確定でやってきます。技術継承の計画は、採用計画と並行で持つべきtimingです(ベテラン退職時の損失を記録・計算する枠組みは ベテラン1人の退職で会社はいくら損する? に整理しています)。
4. 用語整理:「ビルメン」「設備管理」「ビル管理」は同じ人手不足の3つの呼び方
検索される言葉としては別々でも、業界の中ではほぼ同じ業務群を指します。本稿が3つの呼び名を扱うのは、読者のみなさんがどの言葉で問題を検索していても、同じ統計と同じ打ち手にたどり着けるようにするためです。
- ビルメン: 業界・求人側の通称。清掃〜設備運転〜巡回点検まで含む広い意味で使われる
- 設備管理: 建築物衛生法に基づく建築物環境衛生管理技術者業務や、設備の運転・保守点検を指すやや格式の高い呼び方
- ビル管理: 建築物管理業界・ビル運営側からの呼び方。総合管理業態を含むことがある
統計上は、この3つが指す業務の中心は厚生労働省の職業分類上「ビル施設管理」(分類95)に集約されます。以後の数字はすべてこの分類のものです。
4つの呼称の違いの詳細は「設備管理とビルメンテナンスの違い」の比較表に整理しています。
5. なぜ「採用だけ」ではビルメン人手不足が解けないのか
統計から読める制約は3つあります。
- 母数の制約: ビル施設管理職の就業者は全国で約15.7万人。ここから毎年の退職分を上回る流入は起きていない(建設業全体の30代未満シェア11.9%は6年間ほぼ不変)
- 市場の制約: 求人倍率は地域で0.25〜2.83倍。都市部では奪い合い、求人が少ない県では自社の情報力で勝てる余地がある
- 年齢構造の制約: 平均年齢45.6〜57.4歳。将来の退職者数がほぼ確定しており、採用成功分でも退職ペースを完全には追えない
この3制約を素直に受け入れると、経営側の打ち手は「採用の単点強化」から「定着の延長 × 属人化の排除 × 省人化」の組み合わせに変わります。
- 定着: 採れ人数より「12か月残った人数」をKPIにする(離職要因の分析と入社90日設計は ビルメンの離職率・定着率改善 を参照)
- 属人化の排除: 点検報告書・設備台帳・引き継ぎ資料の標準化(ビルメンの定期報告書作成を自動化する手順)
- 省人化: 非コア業務をAIに移し、資格者の時間を法定点検・顧客対応に戻す
6. まとめ: 統計で「自社の位置」を測ってから打ち手を選ぶ
- 建設業就業者は478万人で底打ち、55歳以上36.6%・30代未満11.9%の構造は当分変わらない
- ビル施設管理職は求人倍率1.03(全国平均)だが、都道府県差は0.25〜2.83倍と10倍以上
- 平均年齢は東京都45.6歳〜鳥取県57.4歳。母数は約15.7万人の小さな市場
- 打ち手は「採用の単点強化」ではなく、定着・属人化排除・省人化の組み合わせ
まずは自社県の求人倍率と、自社の12か月定着人数を確認することから始めてください。採用導線と非コア業務工数の改善余地は、採用情報開示スコア簡易診断(無料・3分) で可視化できます。
よくある質問
Q. ビルメン(ビル施設管理職)の有効求人倍率は全国平均1.03倍ですが、地域差はどのくらいありますか?
都道府県別には0.25倍(埼玉県)〜2.83倍(東京都)と10倍以上の格差があります。倍率2.83倍の東京は「求職者1人を他社と奪い合う」市場で、条件面・情報開示面での競争が必須です。一方、倍率0.25倍の埼玉は「求職者4人に対して求人1件」の過剰供給市場であり、「求人票・採用情報の質」で相対的に上位に立てる市場です。同じ「ビルメン人手不足で採れない」でも打ち手が逆になるため、最初に自社県の倍率を確認することが採用設計の第一步です。
Q. ビル施設管理職の就業者数と平均年齢はどのくらいですか?
都道府県合計の就業者数は156,720人(令和2年国勢調査の加工値・47県合計)で、建設業全体478万人の約3%という小さな母数の職種です。平均年齢は東京都45.6歳に対し、鳥取県は57.4歳、秋田県54.7歳、青森県54.2歳と、大都市と地方では10歳以上の世代差があります。平均57.4歳の地域では10年以内に現場世代の大半が退職年齢に達するため、「採用の問題」より先に「引き継ぎの問題」が確定でやってきます。
Q. 「採用だけ」でビルメンの人手不足は解消できますか?
統計から読める制約では解けません。母数の制約(就業者約15.7万人から毎年の退職分を上回る流入が起きていない)、市場の制約(求人倍率0.25〜2.83倍の地域格差)、年齢構造の制約(平均年齢45.6〜57.4歳で将来の退職者数がほぼ確定)の3つがあるためです。打ち手は「採用の単点強化」から「定着の延長 × 属人化の排除 × 省人化」の組み合わせに変わり、12か月残った人数をKPIにする、点検報告書・設備台帳・引き継ぎ資料を標準化する、非コア業務をAIに移す、といった施策を組み合わせます。
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付録: ビル施設管理職 都道府県別 全データ(46県)
| 都道府県 | 求人倍率 | 求人賃金 | 就業者数 | 平均年齢 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 0.49 | 23.4万円 | 7,860人 | 49.0歳 |
| 青森県 | 1.55 | 20.1万円 | 1,810人 | 54.2歳 |
| 岩手県 | 0.45 | 20.2万円 | 1,550人 | 52.7歳 |
| 宮城県 | 1.00 | 24.4万円 | 3,110人 | 45.7歳 |
| 秋田県 | 1.19 | 21.2万円 | 1,210人 | 54.7歳 |
| 山形県 | 1.11 | 21.1万円 | 1,460人 | 53.0歳 |
| 福島県 | 0.98 | 23.4万円 | 2,790人 | 45.2歳 |
| 茨城県 | 1.09 | 25.9万円 | 4,900人 | 44.5歳 |
| 栃木県 | 0.60 | 23.9万円 | 2,190人 | 53.0歳 |
| 群馬県 | 0.91 | 24.6万円 | 2,190人 | 53.5歳 |
| 埼玉県 | 0.25 | 25.7万円 | 10,530人 | 49.3歳 |
| 千葉県 | 0.30 | 26.0万円 | 9,920人 | 48.3歳 |
| 東京都 | 2.83 | 27.2万円 | 13,290人 | 45.6歳 |
| 神奈川県 | 0.40 | 26.1万円 | 12,780人 | 48.4歳 |
| 新潟県 | 1.61 | 23.2万円 | 2,690人 | 48.8歳 |
| 富山県 | 0.90 | 22.9万円 | 1,230人 | 50.7歳 |
| 石川県 | 1.18 | 22.9万円 | 1,220人 | 51.9歳 |
| 福井県 | 1.81 | 24.0万円 | 910人 | 52.5歳 |
| 山梨県 | 1.25 | 24.4万円 | 1,000人 | 47.9歳 |
| 長野県 | 1.29 | 24.8万円 | 2,570人 | 47.8歳 |
| 岐阜県 | 0.94 | 23.5万円 | 2,090人 | 50.0歳 |
| 静岡県 | 1.18 | 24.9万円 | 4,390人 | 46.6歳 |
| 愛知県 | 2.77 | 26.9万円 | 8,670人 | 47.4歳 |
| 三重県 | 1.39 | 25.8万円 | 2,250人 | 47.0歳 |
| 滋賀県 | 0.33 | 23.9万円 | 1,950人 | 44.4歳 |
| 京都府 | 1.30 | 24.1万円 | 3,050人 | 47.6歳 |
| 大阪府 | 1.02 | 24.7万円 | 10,340人 | 49.1歳 |
| 兵庫県 | 0.53 | 24.8万円 | 7,210人 | 36.9歳 |
| 奈良県 | 0.82 | 25.0万円 | 1,600人 | 52.4歳 |
| 和歌山県 | 0.41 | 24.6万円 | 1,100人 | 46.5歳 |
| 鳥取県 | 0.34 | 21.6万円 | 480人 | 57.4歳 |
| 島根県 | 1.82 | 21.3万円 | 750人 | 44.6歳 |
| 岡山県 | 0.80 | 23.1万円 | 2,250人 | 48.7歳 |
| 広島県 | 1.66 | 24.0万円 | 3,560人 | 43.6歳 |
| 山口県 | 0.96 | 23.1万円 | 1,660人 | 45.8歳 |
| 香川県 | 0.52 | 22.5万円 | 1,080人 | 48.9歳 |
| 愛媛県 | 0.70 | 21.6万円 | 1,380人 | 49.9歳 |
| 高知県 | 0.80 | 21.9万円 | 490人 | 53.6歳 |
| 福岡県 | 0.91 | 22.4万円 | 6,550人 | 49.1歳 |
| 佐賀県 | 0.49 | 23.5万円 | 860人 | 53.5歳 |
| 長崎県 | 0.45 | 21.9万円 | 1,770人 | 48.1歳 |
| 熊本県 | 0.45 | 21.0万円 | 1,500人 | 45.5歳 |
| 大分県 | 0.50 | 22.2万円 | 1,570人 | 45.4歳 |
| 宮崎県 | 0.84 | 19.8万円 | 980人 | 45.8歳 |
| 鹿児島県 | 1.36 | 21.4万円 | 1,880人 | 47.9歳 |
| 沖縄県 | 0.69 | 23.6万円 | 2,100人 | 42.0歳 |
出典: 厚生労働省職業安定局(令和7年度、job tag掲載値)・「賃金構造基本統計調査」(令和7年)・「国勢調査」(令和2年) 加工値。AIGENT ACEデータ資産 v_labor_supply(src_0273a579368d533a)。※徳島県は出典データに未収録。賃金・年齢が非掲載の県は「—」。
参考文献・出典
- 厚生労働省職業安定局「一般職業紹介状況」(令和7年度、job tag掲載値): 求人倍率・求人賃金(ビル施設管理・職業分類95)(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/95)
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和7年): 平均年齢(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou_a.html)
- 総務省「労働力調査」年次平均 /「国勢調査」(令和2年): 建設業就業者数・年齢構成、ビル施設管理職就業者数(労働力調査: https://www.stat.go.jp/data/roudou/index.htm / 国勢調査: https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/index.html)
- 上記はAIGENT ACEが加工したデータ資産(
v_labor_supply/v_workforce_age)経由で引用。加工定義は各テーブルのdefinition_noteに記録
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