要点:ビルメン(ビルメンテナンス・設備管理)の年収・給料を、「平均年収」に頼らず確認する方法を解説。厚生労働省の求人賃金(ビル施設管理職・令和7年度)は全国平均25.0万円、都道府県別では19.8〜27.2万円の差があります。基本給・宿直手当・資格手当・賞与という構成要素の分解と、100社調査で見た求人情報の開示実態から、求人票で自分の年収を確認する手順を整理します。
- この記事の結論
- 「平均年収」を鵜呑みにするのが危険な理由
- ビルメンの年収を構成する要素(基本給・宿直手当・資格手当・賞与)
対象読者:設備工事会社の経営者・採用責任者
この記事の結論
ビルメン(ビルメンテナンス・設備管理・ビル管理)の年収は、「平均いくら」という1つの数字で覚えるより、基本給・宿直手当・資格手当・賞与という4つの構成要素に分解して、自分が応募する求人票で確認するのが確実です。
公的な水準の目安として確認できるのは、厚生労働省職業安定局が公表する「求人賃金」です。ビル施設管理職(令和7年度・job tag掲載値)の全国平均は25.0万円で、都道府県別に見ると19.8万円〜27.2万円と差があります。一方で、宿直手当・資格手当・賞与の額は公的統計からは読み取れず、会社ごとの制度次第です。私たちが設備保守・ビルメン業界100社の採用情報を調査したところ、宿直の実態を明記している会社は14%、離職率を公開している会社は8%にとどまりました。
つまり「ビルメン年収」で検索して出てくる平均値同士を比較するより、年収を構成する要素を自分で分解し、書かれていない項目は面接で確認することのほうが、年収のミスマッチを防ぐ確実な方法です。
「平均年収」を鵜呑みにするのが危険な理由
「ビルメン年収」「ビルメンテナンス給料」で検索すると、「平均年収」とみられる数字が多数ヒットします。しかし、その数字をそのまま自分の年収の見込みとして使うのは危険です。理由は4つあります。
- 出典と母集団が不明な数字が多い。調査した主体、対象年、職業分類、正社員のみか全従業者か、という4点が確認できない「平均年収」は、比較材料として使えません。
- 職種の括りが揃っていない。ビルメンという通称の下には、清掃・環境業務が中心の求人と、設備の運転・保守点検が中心の求人が混ざります。統計上の中核は厚生労働省の職業分類「ビル施設管理」(分類95)ですが、Webで見つかる「平均年収」がこの括りと一致しているとは限りません。呼称と業務範囲の対応は「設備管理とビルメンテナンスの違い」の比較表で整理しています。
- 母集団の年齢構成が違う。ビル施設管理職の平均年齢は、東京都45.6歳から鳥取県57.4歳まで地域で10歳以上の差があります(出典は次々章以降と同じ)。20代・30代の自分の年収見込みを、50代が多くを占める母集団の平均と比べても、判断材料にはなりません。
- 手当の構成で、同じ基本給でも年収が別物になる。宿直手当・資格手当・賞与の有無と額は会社ごとに違い、公的統計の1つの平均値には反映されません。
つまり「平均年収」は参考値にとどめ、自分の年収は自分の条件で組み立てて確認するのが確実です。以降の章では、公的に確認できる数値(求人賃金)→年収を構成する4要素→地域別データ→資格→観測事実→求人票の確認項目、の順に整理します。
ビルメンの年収を構成する要素(基本給・宿直手当・資格手当・賞与)
「年収」と一口にいっても、中身は次の4つの構成要素の積み上げです。
| 構成要素 | 中身 | 公的数値・観測で分かることと分からないこと |
|---|---|---|
| 基本給 | 残業を含まない固定給の中心部分 | 水準の目安として、厚生労働省職業安定局の「求人賃金」(ビル施設管理職・令和7年度)が確認できる。全国平均は25.0万円、都道府県別では19.8〜27.2万円(次章で詳述) |
| 宿直手当 | 宿直勤務1回あたりに支給される手当 | 求人賃金の公表値からは読み取れない。月の回数・仮眠時間・明け休みのサイクルとセットで、求人票で確認する対象 |
| 資格手当 | 電験三種・ビル管・第二種電気工事士などへの手当 | 公的統計は資格の有無別に賃金を集計していない。額と選任の要否は会社の制度次第 |
| 賞与 | 業績・評価に応じた特別支給 | 求人賃金の数値からは読み取れない。「前年度実績 何か月分相当」の表記を確認する対象 |
ここで重要なのは、「求人賃金25.0万円」は「働いている人の平均年収」ではないという点です。この数値は、厚生労働省職業安定局が公表している求人票の賃金水準(令和7年度・job tag掲載値)を集計したもので、宿直手当や資格手当、賞与がどの程度含まれた水準かは、求人票ごとの表記が違うため公表値からは分かりません。だから本稿では「25.0万円×12か月」といった年収への換算を行いません。手当と賞与の情報がないまま掛け算をすると、実際の年収と大きくずれた数字を「平均年収」として信じ込むことになるからです。
年収の組み立ては、応募する会社の求人票に書かれた同じ4要素(基本給+宿直手当+資格手当+賞与)で行います。次章の地域別データは「水準の目安」として使い、内訳は求人票で確認する、という使い分けが実務的です。
都道府県別の求人賃金:19.8万円から27.2万円まで差がある
厚生労働省職業安定局の一般職業紹介状況(job tag掲載・令和7年度)に基づくビル施設管理職(職業分類95)の実数です。全国の有効求人倍率は1.03倍、求人賃金の全国平均は25.0万円です。
| 区分 | 都道府県 | 求人倍率 | 求人賃金 | 就業者数 | 平均年齢 |
|---|---|---|---|---|---|
| 倍率最高・賃金最高 | 東京都 | 2.83倍 | 27.2万円 | 13,290人 | 45.6歳 |
| 2位 | 愛知県 | 2.77倍 | 26.9万円 | 8,670人 | 47.4歳 |
| 賃金上位・倍率最下位圏 | 神奈川県 | 0.40倍 | 26.1万円 | 12,780人 | 48.4歳 |
| 賃金上位・倍率最下位圏 | 千葉県 | 0.30倍 | 26.0万円 | 9,920人 | 48.3歳 |
| 賃金上位・倍率最低 | 埼玉県 | 0.25倍 | 25.7万円 | 10,530人 | 49.3歳 |
| 大都市圏 | 大阪府 | 1.02倍 | 24.7万円 | 10,340人 | 49.1歳 |
| 大都市圏 | 宮城県 | 1.00倍 | 24.4万円 | 3,110人 | 45.7歳 |
| 中核都市 | 広島県 | 1.66倍 | 24.0万円 | 3,560人 | 43.6歳 |
| 地方・倍率高め | 島根県 | 1.82倍 | 21.3万円 | 750人 | 44.6歳 |
| 地方・倍率高め | 青森県 | 1.55倍 | 20.1万円 | 1,810人 | 54.2歳 |
| 賃金最低 | 宮崎県 | 0.84倍 | 19.8万円 | 980人 | 45.8歳 |
出典: 厚生労働省職業安定局(令和7年度、job tag掲載値)・「賃金構造基本統計調査」(令和7年)・「国勢調査」(令和2年)の加工値。AIGENT ACEデータ資産 v_labor_supply(src_0273a579368d533a)経由。表は抜粋で、全46県のデータは「ビルメン 人手不足の統計」の付録に収録しています。賃金のレンジ19.8〜27.2万円は、同収録46県の求人賃金の最小値(宮崎県)と最大値(東京都)です。
読み取れる事実は3つです。
- 求人賃金が高い県と、求人倍率が高い県は一致しない。東京都は倍率2.83倍・賃金27.2万円と両方高い一方、神奈川・千葉・埼玉は賃金が25〜26万円と上位圏なのに、倍率は0.25〜0.40倍と最下位圏です。求職者供給が多い市場では、賃金の水準と競争の激しさが連動しないことを示しています。
- 同じ「ビルメンの求人」でも市場の大きさが違う。就業者数は東京都13,290人に対し島根県は750人。都市部は奪い合いの市場、求人が少ない県では求人票の情報の質で相対的に上位に立てる市場です。
- 地方ほど平均年齢が高い。東京都45.6歳・愛知県47.4歳に対し、青森県は54.2歳。年齢構成が違えば母集団の平均賃金も変わり、「全国平均」との比較の意味が薄れる理由の1つです。
繰り返しになりますが、これは求人票に掲げられた賃金の平均であって、各県で働いている人の年収の実態ではありません。水準の目安として使い、自分の条件は求人票で確認してください。
資格(電験三種・ビル管など)が収入に与える影響
ビルメンの現場で処遇に結びつきやすい主な資格は、第三種電気主任技術者(電験三種)・建築物環境衛生管理技術者(ビル管)・第二種電気工事士・危険物取扱者(乙種4類)などです。このうち電験三種とビル管は、法定選任や受託契約の維持・新規入札の前提に関わる資格で、会社にとっての重要性が高い反面、供給が少ない争奪戦の対象になりやすい、というのがビルメン採用の構造です。
そのうえで、収入の観点から押さえるべき事実が2つあります。
- 公的統計は資格の有無別に賃金を集計していない。厚生労働省職業安定局の求人賃金も「ビル施設管理職」の平均であり、「電験三種を取ると年収が何万円上がる」といった数字を公的データから導くことはできません。Webで見かける「資格手当の相場」という数字も、出典と母集団を確認してから使う必要があります。
- 手当の額は会社ごとの制度次第で、開示の差が大きい。後述の100社調査では、資格手当の金額を明記している会社は22%にとどまりました。同じ資格を持つ人でも、応募先によって年収の組み立ては大きく変わります。
だから資格の収入面での評価は、「資格を持っているか」ではなく「その資格に会社がいくらの手当を設定し、選任を任せるのか」で確認します。転職側の視点では、求人票の「資格手当」の額、選任の場合と非選任の場合の区別、取得支援制度の有無が確認対象です。電験三種の採用難の構造と求人票の確認ポイントについては「電験三種・電気主任技術者の採用難を突破する求人票の書き方」で詳しく整理しています。
観測した会社では:宿直・離職率を明記する会社は少なかった
私たちは、設備保守・ビルメンテナンス業界の中堅・中小企業100社を対象に、採用情報の公開レベルに関する独自調査を行いました(AIGENT ACE・2026年)。年収を構成する要素のうち、どれだけの会社が数字や実態を公開しているかの結果が次の表です。
| 調査項目 | 開示している会社 |
|---|---|
| 宿直の実質仮眠時間・環境の明記 | 14社(14%) |
| 離職率・平均勤続年数の公開 | 8社(8%) |
| 資格手当金額の明記 | 22社(22%) |
| 1日の業務スケジュール・シフト例 | 11社(11%) |
| 常駐と巡回の割合・配属基準 | 19社(19%) |
| 未経験者向け育成カリキュラムの明示 | 16社(16%) |
この結果が意味するのは、年収の中身を左右する項目(宿直・資格手当・シフト)ほど、公開されていないことが多いという事実です。求職者にとっては、「書かれていない項目は面接で聞く」しかなく、比較基準が額面の月給だけに偏りやすくなります。逆にいえば、月給の内訳・宿直の回数と仮眠時間・資格手当まで開示している会社は、情報格差の面で相対的に有利です。条件を開示できる体制は、給与制度や労務管理の整備状況とも相関すると考えられます。
離職率の公開が8%という点にも注意してください。年収の数字は「入社時点」の条件ですが、その条件が12か月後にどうなっているかは別の問題です。離職要因の分析と定着の観点は「ビルメンテナンス・設備管理の離職率はなぜ高いのか」で、100社調査の全容と採用側の打ち手は「ビルメン・設備管理の人手不足と12か月定着」で整理しています。
※上記は匿名化した観測事実であり、特定の会社を示すものではありません。
求人票で確認すべき項目
前章までの事実を踏まえると、ビルメンの求人票では次の項目を確認するのが年収のミスマッチ防止に有効です。書かれていないからといって条件が悪いとは限りませんが、確認しないまま入社すると「聞いていた年収と違う」というミスマッチに直結します。
| 確認項目 | なぜ必要か | 書かれていない場合の確認方法 |
|---|---|---|
| 月給の内訳(基本給+各手当) | 「求人賃金25.0万円」は平均値であり、手当込みか基本給のみかで実態が変わる | 面接で「基本給と手当の内訳」を聞く |
| 宿直の月平均回数・連続仮眠時間・明け休み | 年収に直結する手当でありながら、明記している会社は100社中14社 | 「月平均の宿直回数」「連続仮眠時間」「宿直翌日の勤務扱い」を聞く |
| 資格手当の額と選任の要否 | 金額を明記する会社は22社。選任の有無で責任範囲も変わる | 「選任の場合と非選任の場合の金額」を分けて聞く |
| 賞与の前年度実績 | 求人賃金の公表値からは読み取れない | 「前年度実績 何か月分相当」の表記を確認する |
| 残業の目安と支給ルール | 同じ月給表記でも残業量で年収の振れ幅が変わる | 「月平均の残業時間」「みなし残業の有無」を確認する |
| 常駐か巡回か・配属基準 | 勤務形態で手当構造と生活リズムが変わる。開示している会社は19社 | 「配属の決まり方」「常駐と巡回の比率」を聞く |
年収を自分で組み立てる手順はシンプルです。まず求人票の月給の内訳を確認し、次に宿直・資格手当など変動要素の月あたりの上乗せ分を足し、最後に賞与の実績表記(あれば)を加算します。途中のどの要素が書かれていないかが、面接で聞くべき質問リストになります。求人票にこれらの項目が揃っている会社は、採用情報を真面目に運用しているサインとして、プラスに評価してよいと考えます。
FAQ:よくある質問
Q. ビルメンの平均年収はいくらですか?
本稿で公的数値として確認できるのは、厚生労働省職業安定局の「求人賃金」(ビル施設管理職・令和7年度・job tag掲載値)で、全国平均25.0万円、都道府県別では19.8〜27.2万円です。これは求人票に掲げられた賃金水準の平均であって、「働いている人の平均年収」ではありません。宿直手当・資格手当・賞与がどの程度上乗せされるかは会社ごとの制度次第のため、単一の「平均年収」を断定する根拠がありません。Webで見つかる「平均年収」は、出典・対象年・職業分類・母集団が確認できるものだけを参考値として使い、自分の年収は求人票の4要素(基本給+宿直手当+資格手当+賞与)で組み立ててください。
Q. 求人賃金25.0万円は、年収にするといくらですか?
本稿では換算しません。理由は2つです。第一に、求人賃金は求人票に掲げられた賃金を集計した平均値で、宿直手当・資格手当・賞与がどの程度含まれた水準かは公表値から読み取れません。第二に、勤務地(19.8〜27.2万円の地域差)や雇用形態の条件が異なる求人の平均を、特定の会社・特定の人の年収に掛け算で換算すると、根拠の薄い数字を生んでしまいます。年収を知りたい求人については、基本給・各手当・賞与の内訳を求人票か面接で確認し、「月給の内訳+宿直・資格手当の月あたり上乗せ分」を12か月分に組み立て、賞与の実績表記があれば加算する、という手順で自分で試算するのが確実です。
Q. 宿直手当や資格手当は年収にどのくらい反映されますか?
反映の大きさは会社ごとの制度次第で、公的統計から導ける数字はありません。観測した100社では、宿直の実態(仮眠時間・環境)を明記している会社は14%、資格手当の金額を明記している会社は22%にとどまります。つまり、これらの手当が年収にどのくらい効くかは、求人票を読むか面接で聞くかしないと分からない、というのが業界の実態です。宿直がある会社では「月の宿直回数×1回あたりの手当」が年収の上乗せ分として効くため、回数・連続仮眠時間・明け休みのサイクルと合わせて確認してください。資格手当は、電験三種・ビル管などでは選任の要否とセットで金額を確認するのがポイントです。
まとめ
- 「平均年収」は参考値。ビルメンの年収は基本給・宿直手当・資格手当・賞与の組み合わせで決まり、同じ基本給でも内訳が違えば年収は別物になる
- 公的に確認できる水準の目安は、厚生労働省職業安定局の求人賃金(ビル施設管理職・令和7年度)。全国平均25.0万円、都道府県別では19.8〜27.2万円。ただし平均年収ではなく、年収への機械的な換算はできない
- 求人賃金が高い県と求人倍率が高い県は一致しない(埼玉0.25倍・25.7万円、東京2.83倍・27.2万円)。勤務地の数値を最初に確認する
- 資格(電験三種・ビル管など)の手当額は公的統計にない。100社調査では金額を明記する会社は22%
- 宿直の実態を明記する会社は14%、離職率を公開する会社は8%。書かれていない項目は面接で確認する
- 条件を明記している会社は、情報開示の姿勢ごと評価材料になる
人手不足と需給の公的統計(都道府県別46県の全データを含む)は「ビルメン 人手不足の統計」、採用側の設計と12か月定着の考え方は「ビルメン・設備管理の人手不足と12か月定着」、呼称と業務範囲の整理は「設備管理とビルメンテナンスの違い」で解説しています。
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