要点:電話対応を減らすには、取り方を変える前に「かかってくる理由」を潰す順序があります。件数の内訳を4分類し、なくす・移す・任せるの判断基準を整理しました。
- この記事の結論
- 「電話を早く取る」は改善ではありません
- こんな状態になっていませんか
対象読者:各事業部門の業務改善・効率化推進担当者
この記事の結論
- 電話対応の負荷は「取り方」ではなく「かかってくる理由」を潰さないと減りません
- 着信は4種類に分かれます。このうち約半分は、そもそもかける必要がなかった電話です
- なくす → 移す → 任せる、の順に処理します。順序を飛ばすと、不要な電話を高性能に受け続けることになります

電話対応の負荷を減らすには、理由を潰すことが重要です。
※ この記事は 生産性が上がらない本当の理由 で挙げた3つの論点のうち、「測っていない業務がある」を掘り下げたものです。
「電話を早く取る」は改善ではありません
電話対応の負荷が話題になると、まず出てくるのが「取り方」の議論です。担当を増やす。当番制にする。留守番電話に切り替える。
どれも着信そのものは減りません。受け皿を広げているだけで、水の量は同じです。
減らすべきは対応時間ではなく、着信の件数です。そして着信件数は、種類ごとに打ち手がまったく違います。
こんな状態になっていませんか
- 集中したい作業が、10分に1回の着信で毎回中断される
- 同じ質問の電話を、1日に何度も受けている
- 「担当者に代わります」で保留にしている時間が長い
- 誰が何件受けたのか、記録が残っていない
- 夜間や昼休みにかかってきた電話を、取り逃していることに気づいていない
最後の項目に心当たりがない場合、それは問題がないのではなく、測っていないだけの可能性があります。
着信を4つに分類する
まず1週間、着信の内容をメモしてください。分類はこの4つで足ります。
① 調べれば分かる問い合わせ
営業時間、住所、料金、在庫の有無、書類の書き方。Webサイトに書いてあるか、書いておくべき情報です。
これがかかってくる理由は2つしかありません。サイトに情報がないか、あっても見つけられないかです。
② 状況確認
「例の件、どうなっていますか」「発送は済みましたか」。
進捗が相手から見えていないために発生します。こちらの情報開示が不足しているという信号です。
③ 取り次ぎ
担当者につなぐためだけの着信。受けた人は内容を判断せず、保留にして担当を探します。
④ 判断・相談が必要な用件
金額の交渉、仕様の相談、クレーム対応。人が出るべき電話はここだけです。
減らす順序
第1段階:なくす(①と②)
①はWebサイトの情報整理で消えます。よくある質問を並べるのではなく、電話で実際に聞かれた順に並べ替えてください。想像で作ったFAQと、実際の着信内容は一致しません。
②は進捗を相手から見える場所に置くことで消えます。メールでの自動通知でも、専用ページでも構いません。「聞かないと分からない」状態をやめるだけです。
同じ構造は社内にもあります。空き状況が見えないために発生する連絡の往復は シフト作成に毎月何時間かけていますか でも扱っています。
この段階で着信は目に見えて減ります。しかも費用はほとんどかかりません。
第2段階:移す(残った①と③)
サイトを整理しても、電話で聞きたい人は残ります。ここでフォームやチャットへの導線を用意します。
注意点があります。電話番号を消してフォームだけにするのは移すではありません。単に取りこぼしているだけで、機会損失に変わっただけです。
第3段階:任せる(③と、残った①)
ここで初めて、機械に一次受けを任せる検討に入ります。用件の聞き取りと振り分けは、定型化できる範囲であれば人が張り付く必要はありません。
第1段階を飛ばしてここから始めると、なくすべきだった着信を、高い精度で受け続けることになります。
第4段階:人が集中する(④)
①〜③が減った分、④に時間を使えます。判断が必要な電話は、そもそも減らすべきものではありません。
種類別の打ち手一覧
| 着信の種類 | 想定される割合 | 打ち手 | 費用感 | 効果が出るまで |
|---|---|---|---|---|
| ① 調べれば分かる | 多い | サイトの情報整理 | ほぼゼロ | 数日〜数週間 |
| ② 状況確認 | 中程度 | 進捗の可視化・自動通知 | 小 | 数週間 |
| ③ 取り次ぎ | 中程度 | 一次受けの自動化 | 中 | 数ヶ月 |
| ④ 判断・相談 | 少ない | 減らさない | — | — |
割合は業種や事業内容で大きく変わります。だからこそ、自社で1週間数えることに意味があります。他社の平均値は、自社の打ち手を決める根拠になりません。
なぜ「電話を減らす」が後回しにされるのか
電話対応は、担当者の負荷としては大きいのに、経営の議題には上がりにくい業務です。理由は単純で、件数が記録されていないからです。
記録がなければ、削減効果も測れません。効果が測れない改善は、予算がつきません。この「担当が決まらないと数字が動かない」構造は 可視化しても改善しない理由 にも共通します。
総務省の令和8年版情報通信白書によると、日本企業で何らかの業務に生成AIを利用している割合は86.4%に達しています。一方で日本生産性本部の集計では、2024年の日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟38カ国中28位、実質上昇率はマイナス0.6%でした。
道具は入っているのに数字が動かないのは、こうした「測られていない業務」が残り続けているためです。改善の第一歩は、導入ではなく計測です。
よくある質問(FAQ)
Q1:電話をやめると、顧客満足度が下がりませんか。
A:やめるのは①と②、つまり顧客が本来かける必要のなかった電話です。知りたい情報がすぐ手に入れば、電話をかける手間がなくなる分、相手の負担も減ります。減らしてはいけないのは④で、ここは人が出るべき領域として残します。
Q2:1週間数えるのが現実的ではありません。
A:全件でなくて構いません。特定の曜日の午前中だけでも傾向はつかめます。正確な母数より、①が多いのか③が多いのかという偏りが分かることに価値があります。
Q3:一次受けの自動化から始めてはいけませんか。
A:始めることは可能ですが、費用対効果が落ちます。①と②を先に潰すと、自動化すべき対象が絞り込まれ、必要な仕組みも小さく済みます。先に減らしてから自動化するほうが、投資額は下がります。
「電話を減らすと顧客を逃がす」という反論にどこまで答えるか
ここまでの説明で「電話こそ顧客接点なのに減らしてよいのか」と感じた方もいるはずです。その反論のうち、最強の形はこうです。
「電話をかけてくる客ほど熱量が高く、受注確度も高い。その声をサイト誘導や自動応答でさばけば、効率化できたつもりで本当は機会を逃している。高齢の顧客や緊急の用件は電話でしか届かず、件数削減を追うと『つながらない会社』という悪評が立つだけではないか」
この反論は、私たちも半分は正しいと考えます。減らしてよい電話と減らしてはいけない電話は別物です。実際の運用で私たちが推奨するのは、次の3点です。
- 減らすのは①と②だけに限定する: 減らす対象は、調べれば分かる問い合わせと状況確認、つまり顧客が本来かける必要のなかった電話だけです。本文のQ1で述べたとおり、判断・相談が必要な④は減らさず、むしろ手厚く受けます。
- 電話番号は残し、導線を足すだけにする: 電話をなくすのではなく、サイト整理と進捗可視化で「かけなくても済む状態」を作ります。電話をかけたい人は今までどおりかけられます。取りこぼしは生まれません。
- ④の応対品質を削減効果の判定に入れる: 件数が減った分、判断が必要な電話に割ける時間が増えたかを確認します。待ち時間の短縮や保留時間の減少が出ていれば、顧客接点は弱まるどころか強まっています。
電話削減の目的は「顧客との接触を減らすこと」ではなく、「不要な待ち時間をなくし、本当に話すべき用件に人手を集中させること」です。この線引きであれば、上記の懸念は現実のものになりません。
まとめ
- 電話対応の改善は「取り方」ではなく「かかってくる理由」から手をつけます
- 着信は4種類。①調べれば分かる ②状況確認 ③取り次ぎ ④判断が必要、に分けます
- なくす → 移す → 任せる、の順序を守ってください
- まず1週間数える。測っていない業務は、改善の予算がつきません
自社の着信内訳を知らないまま導入を検討している場合、それは打ち手ではなく賭けになります。
次に読む
一次受けを機械に任せる段階まで進んだとき、実際にどこまで対応できてどこからが人の担当になるのか。境界線の引き方はこちらにまとめています。
参考文献・出典
- 令和8年版 情報通信白書|生成AIの業務利用状況 – 総務省, 2026年7月
- 労働生産性の国際比較2025 – 公益財団法人日本生産性本部, 2025年12月
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着信内訳の数え方から、どこまでを人が担当すべきかの線引きまでご相談いただけます。
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