要点:管工事・給排水の技術者採用が難しいのは、職種の定義が曖昧で、資格要件と実際の仕事が噛み合っていないから。観測事例をもとに、職種分解・採用しづらさの要因・打ち手を整理します。
- この記事の結論
- なぜ管工事の人材は「採りにくい」と言われるのか
- 配管・管工事人材の職種分解
対象読者:設備工事会社の採用担当者・経営者
この記事の結論
管工事・給排水の技術者が採りにくい最大の理由は、人手不足そのものよりも、「配管工」「管工事施工管理」という言葉が求職者側に伝わっていない構造の問題です。職種を細かく分解し、応募者が検索する言葉と資格要件を求人票に揃えることが、採用設計の第一歩になります。
なぜ管工事の人材は「採りにくい」と言われるのか
私たちが関東の工場設備会社156社の公開情報を観測したところ、配管・製缶・溶接の正社員募集、さらに協力会社の募集を自社サイトで行っている会社が複数見つかりました。また、管工事・機械器具設置工事業の建設業許可を持つ会社は、従業員11〜30名規模の小規模会社が多くを占めました。つまり「採用活動を継続的に行わざるを得ない会社」が多い分野です。
背景として考えられるのは、次の3つの構造です(以下は公開情報の観測と一般論の整理であり、判断の目安です)。
- 職種名が生活語と乖離している:「配管工」「管工事施工管理」という言葉は、求職者が日常的に使う言葉ではないため、検索に浮かびにくい
- 資格と仕事内容が噛み合っていない: 求人側は資格の有無で篩いにかけるが、実務能力は資格だけでは測れない
- 仕事の内容が見えない: 半導体向けの超純水配管、食品工場の設備など、同じ「配管」でも求められる精度・知識が大きく異なる
観測した会社の中には、超純水配管や食品工場設備といった専門性の高い配管需要を持つ会社がありました。この種の仕事は、一般の「水回りの配管」とは別物の技術であり、求人票でその違いを示せていないと、応募者は「自分にできる仕事か」を判断できません。
配管・管工事人材の職種分解

採用設計の最初の工程は、自社が本当に欲しい人材を職種レベルで分解することです。以下は公開情報の観測をもとに整理した、判断の目安です。
| 職種 | 主な仕事 | 関係する資格・技能の例 | 採用市場での供給 |
|---|---|---|---|
| 配管工(Skills労務) | 現場での配管の加工・組立て、溶接・ねじ込み接合 | 溶接技能者、配管技能講習 | 減少傾向と言われています |
| 給排水設備工 | 給排水・衛生設備の施工・検査 | 給水装置工事主任技術者など | 専門性が高く狭き門 |
| 管工事施工管理 | 工程管理・品質管理・安全管理、職人への指示書出し | 1級・2級管工事施工管理技士 | 有資格者は希少 |
| 現場作業者(見習い) | 材料運搬、手工具での補助作業 | 資格不要・現場で習得 | 未経験採用が主戦場 |
重要なのは、この4つを「配管の人材」として1つにまとめて採用しないことです。求職者が探しているのは「資格を活かせる施工管理の仕事」か「資格ゼロから始められる現場補助の仕事」のどちらかであり、分けて出稿することで、それぞれに届く求人になります。
採用しづらさの要因と打ち手
次に、観測と一般論から整理した「採用しづらさの要因」と、中小規模会社が取り得る打ち手を対応付けます。
| 要因 | 状況の目安 | 中小会社の打ち手 |
|---|---|---|
| 求人票の職種名が検索されない | 「配管スタッフ」等の曖昧な表記 | 「管工事施工管理 採用」等、求職者が検索する語を含める |
| 資格要件が高すぎる | 未経験応募がそもそもできない設計 | 未経験枠と資格者枠を分け、育成後の資格取得支援を明記 |
| 仕事の専門性が伝わらない | 「一般建築と同じ」と思われ離脱される | 超純水・食品工場など、扱う設備の専門性を具体名で書く |
| 正社員しか採れない設計 | 協力会社の枠が活用されていない | 観測した会社では、正社員と協力会社を併記して募集している例あり |
| 採用後の育成設計がない | 入社後に放置し早期離職する | 3か月・6か月・1年の時期別の習得目標を求人票に書く |
特に効くのが「仕事の中身を具体名で書く」ことです。「配管工事」ではなく「食品工場の衛生配管」「半導体工場の高純度配管」と書くだけで、自分に合うかどうかを求職者が即座に判断でき、応募の質が上がります。
求人票で確認すべきチェックリスト
公開情報を観測した限り、多くの会社の求人票には次の項目が不足しています。配信前のチェックリストとして使えます。
- 職種名に「管工事」「給排水」が入っているか(「スタッフ」だけでは検索されない)
- 応募に必須の資格と、入社後に取得支援する資格が分けて書かれているか
- 扱う設備の種類(工場・ビル・半導体・食品など)が具体名で書かれているか
- 勤務地の範囲と、宿直・泊まり込みの有無が明記されているか
- 給与の幅と、資格手当の有無が書かれているか
管工事の労務費用の基準については、国土交通省が「労務費基準」のポータルサイトで公表しており、職種別の人件費水準を確認できます。給与水準を設定する際の客観的な参照先として活用できます。また、現場での配管工や施工管理の施工生産性と見積り時の人工算定基準については、「配管工事の標準歩掛一覧」で管種別の人工数値を詳しく解説しています。隣接する設備工事との多能工化や共同受注を検討する際は、「電気工事の労務歩掛表」や「空調設備の単価改定基準」を参照し、職種横断での労務費と単価構造を把握しておくことが有効です。なお、採用情報の公開度の実測として、AIGENT ACE Equipment Intelligenceが2026年9月に1都2県の電気工事関連企業100社を観測(採用ページ解析40社)した旗艦調査では、給与明記率7.5%・Recruitment Information Score平均18.7点(最高55点)でした。詳細は旗艦レポート。
よくある質問
Q. 管工事施工管理の資格がない人を採用してもいいですか?
可能です。資格要件は監理技術者等の配置義務に直結する場面があるため、必要な資格者数は会社の工事請負額との関係で確認してください。そのうえで、施工管理補助として採用し、実務経験を積ませたうえで資格取得を支援するルートが一般的な設計です。
Q. 未経験者を採用する場合、何から教えるべきですか?
工具の名前・材料の規格・安全にかかわる合図など、現場で共通の基礎から始めるのが判断の目安です。観測した会社の中には、入社直後から専門性の高い配管を任せるのではなく、補助作業から段階的に任せる範囲を広げる設計をしている例がありました。
Q. 協力会社の募集は正社員採用と矛盾しませんか?
矛盾しません。観測した会社では、公式サイトで正社員募集と協力会社募集を併記している例が複数ありました。受注量の変動に対して、正社員は中核の施工管理・専門作業を担い、協力会社はピーク時のCapacityを担う、という役割分担の設計が現実的です。
参考文献・出典
関連記事:
- 給排水・衛生設備会社の採用・育成・業務設計ガイド(業界別ハブ)
- 設備工事の未経験採用、最初の1年間の設計
- 電気・空調設備の技術者採用の考え方
- 消防設備の資格と事業の全体像
- 施工管理が辞める理由と防止の設計
- 配管工事の標準歩掛一覧
- 電気工事の労務歩掛表
- 空調設備の単価改定基準
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