要点:「建設業の人手不足」は日本だけの話か、海外でも起きているのか。米国BLSの電気工事士雇用予測、日本の特定技能在留外国人の統計、i-Construction 2.0の省人化方向性など検証済みデータをもとに、国ごとの状況と共通する構造を整理します。
- この記事の結論
- 日本の状況: 検証できる3つのデータ
- 海外の状況: 検証済みのデータから見えるもの
対象読者:設備工事会社の経営者・採用責任者
この記事の結論
「建設業の人手不足は日本特有の現象なのか」という問いに対する答えは、構造としては世界共通、数字の出し方は国ごとに別です。米国では労働統計局(BLS)の予測で電気工事士の雇用が2025年から2035年に9%増と、全職業の平均を上回る伸びが見込まれており、需要側の拡大が続く国があります。日本では建設分野の特定技能在留外国人が、出入国在留管理庁の集計(令和7年12月末現在・速報値)で特定技能1号49,323人・2号1,799人に達する一方、国土交通省は「i-Construction 2.0」で省人化を方向性として掲げており、人を確保する政策と、人に頼らない施工に進める政策が並行して動いています。
本稿では、検証できる公的データに限定したうえで、日本と海外の状況を整理し、各国に共通する構造(高齢化・若年流入の減少・需要増)を定性的に読み解きます。なお、各国の「〇万人不足」といった不足数値は出典の検証が十分でないため、本稿では扱いません。
日本の状況: 検証できる3つのデータ
まず、日本側の状況を公的データで確認します。
| データ | 内容 | 示すこと |
|---|---|---|
| 特定技能在留外国人 | 建設分野の特定技能在留外国人は、出在留管理庁集計(令和7年12月末現在・速報値)で1号49,323人・2号1,799人。厚労省「外国人雇用状況」届出(令和7年10月末)では建設業の特定技能は26,965人 | 外国人材が建設の人手を補う制度として定着しつつある(母体・基準日が異なる2つの集計がある点に注意) |
| i-Construction 2.0 | 国土交通省が省人化を方向性として掲げる | 人手に依存しない施工体制への転換を国が後押し |
| 賃金構造基本統計調査 | 厚労省が毎年公表する業種別・年齢別の賃金統計 | 建設業の賃金水準を他産業と比較する基礎資料 |
この3つを重ねると、日本の建設業は「海外人材の受入れ(量で補う)」「生産性向上(人以外で補う)」「賃金・処遇の整備(条件で集める)」という複数の路線を同時に進めていることが分かります。単一の解決策ではなく、複数の調整弁を同時に回しているのが現状です。
海外の状況: 検証済みのデータから見えるもの
海外については、信頼できる出典で確認できた範囲に限定して整理します。
| 国・地域 | 検証済みの状況 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 米国 | BLS(労働統計局)の職業別展望によると、電気工事士の雇用は2025年から2035年に9%増の予測。これは全職業の平均より高い伸び | 電気工事という職種については、需要拡大が公式統計で裏付けられている。技能職の雇用が縮むどころか伸びる予測 |
| 日本(比較軸) | 特定技能の受入れ拡大とi-Construction 2.0の省人化を並行して推進 | 需要増への対応を「人の補充」と「省人化」の両輪で進める |
米国の9%増という数字は、逆に言えば需給が引き張り続ける見込みという意味でもあります。雇用が伸びる予測は業界の魅力の証であると同時に、獲得競争が加熱する予測でもあります。この「成長産業であるほど人を集めにくくなる」逆説は、国が違っても共通する構造です。
各国で共通する3つの構造
数字の比較は出典の整備状況が国ごとに異なるため、ここでは定性整理に限定します。建設業の人手不足を各国で見ると、次の3つの構造が共通して指摘できます。
1. 技能労働者の高齢化
建設業の技能は現場での経験蓄積に依存する部分が大きく、熟練層の世代交代がどの国でも課題になっています。高齢層の離職スピードに対して、代替わりのペースが追いつくかが持続可能性の分水嶺です。
2. 若年層の流入減
労働集約・屋外作業・技能習得に時間がかかる、といった職種特性から、若年層の入口が狭まりやすい構造は先進国共通です。入口の狭まりは即座には現れず、10年単位で効いてくる遅効性の問題です。
3. インフラ更新・設備投資など需要側の増加
老朽インフラの更新、脱炭素に伴う設備改修、データセンター等の建設需要など、需要側は縮むどころか拡大している国が多く、米国の電気工事士9%増の予測はその一例です。「仕事が減るから問題ない」というシナリオは成り立たず、供給側の確保・省人化が必須になります。
不足への対処の型: 3つの方向に分解する

日本と海外の状況を踏まえると、建設業の人手不足への対処は次の3つの型に整理できます。どの国でも、この3軸の組み合わせで動いています。
| 対処の型 | 内容 | 日本での実例 |
|---|---|---|
| ①人を増やす | 採用・外国人材の受入れ・処遇改善で供給側を拡大 | 建設分野の特定技能(出在留管理庁集計・令和7年12月末速報で1号49,323人・2号1,799人)。関東の工場設備会社156社の社内観測でも、採用と協力会社募集を並行して行う会社が複数確認された |
| ②人以外で補う | 生産性向上・省人化・ICT施工で必要工数を圧縮 | 国土交通省「i-Construction 2.0」が省人化を方向性として掲げている |
| ③条件で選ばれる | 賃金・労働条件を可視化し、労働市場で選ばれる会社になる | 厚労省賃金構造基本統計調査など、自社の処遇を客観比較するための公的統計が整備されている |
重要なのは、この3つが排他ではなく同時進行だという点です。「外国人材に頼ればよい」「DXで解決できる」という単一の物語は、現場の実態とずれやすくなります。①〜③のうち自社がどの軸をどこまで動かせているかを点検することが、海外比較から得られる最大の示唆です。
日本の会社が海外状況から学べること
米国で電気工事士の雇用が平均以上に伸びる予測であること、日本で特定技能の受入れと省人化が並行して進んでいることは、別々のニュースに見えて同じ方向を指しています。すなわち、建設・設備の技能職は世界的に「選ばれる会社だけが人を確保できる」市場に向かっているということです。
日本国内の状況の詳細は「建設業界の人手不足(2026年版)」、外国人材の受入れの全体像は「建設業の外国人材活用」で解説しています。設備工事に特化した受注能力の話は「設備工事の受注能力」を、米国との電気工事士の比較そのものは「日米の電気工事士比較」にまとめています。
よくある質問
Q. 海外でも建設業の人手不足は起きていますか?
構造としては共通しています。技能労働者の高齢化、若年層の流入減、インフラ更新など需要側の拡大という3要素は多くの先進国で見られます。米国ではBLSの予測で電気工事士の雇用が2025年〜2035年に9%増(平均より高い伸び)とされており、人手が足りているどころか、雇用が伸び続ける見込みの職種です。ただし、国ごとの具体的な不足数値は統計の前提が異なり、安易に比較できないため本稿では扱っていません。
Q. 特定技能の外国人材で人手不足は解決しますか?
特定技能の建設分野は、出在留管理庁集計(令和7年12月末現在・速報値)で1号49,323人・2号1,799人となっており、供給側の重要な調整弁の一つです。一方で、国交省がi-Construction 2.0で省人化を掲げていることからも分かる通り、制度だけですべてを賄うのではなく、受入れ・生産性向上・処遇整備を並行して進めるのが現実的な線です。自社内での前提を「設備工事の受注能力」の記事で点検することをおすすめします。
Q. 日本と海外で、賃金の水準感はどう調べればよいですか?
日本国内の業種別・年齢別の水準は厚生労働省の賃金構造基本統計調査が基礎資料になります。海外の水準は米国ならBLSの職業別統計(電気工事士のページなど)が公表されています。為替・物価・労働時間の前提が異なるため、「差」を正確に出すのは難しいものの、公式統計同士を確認するのが最も誤りの少ない方法です。日米の電気工事士の詳細な比較は「日米の電気工事士比較」を参照してください。
参考文献・出典
- 米国労働統計局(BLS)Occupational Outlook Handbook: Electricians
- 国土交通省「i-Construction 2.0」
- 厚生労働省 賃金構造基本統計調査
- 建設分野の特定技能在留外国人出在留管理庁集計(令和7年12月末現在・速報値)で1号49,323人・2号1,799人。厚労省「外国人雇用状況」届出(令和7年10月末)では建設業の特定技能は26,965人(母体・基準日が異なる2系統の集計)
関連記事
フルスクラッチ開発との単純比較ではなく、自社標準の積算(直請・再利用前提)との比較で費用を抑える設計です。※削減率は案件の要件・既存資産の流用可否により大きく異なり、特定率を保証するものではありません。積算前提は料金シミュレーター・/price-list/の算定条件をご確認ください。自社の規模や自動化したい業務を選択するだけで、想定開発費用と手作業による工数削減効果をその場でシミュレーションできます。