要点:採用人数だけでは分からない採用品質を、12か月定着、独力業務、教育負荷、採用経路で測るKPIとして整理します。
- この記事の結論
- 構造を分解する
- 採用費の定義表
対象読者:設備工事会社の採用担当者・経営者
この記事の結論
12か月定着人数とは、採用した人数ではなく、入社から12か月間在籍した人数を分母とする採用KPIです。採用費を12か月定着人数で割った値が実質的な採用単価となる(AIGENT ACEの定義)。
採用人数は入口の指標です。採用費と12か月後の在籍者数を使う独自管理指標を設計し、定義を先に固定します。
構造を分解する
分子に求人、紹介、面接、採用、教育費を含め、分母と除外条件を明示します。AI Agentは採用経路と教育履歴を整理しますが、個人の採否判断は自動化しません。参考として、高校新卒者のハローワーク求人倍率は4.12倍(2026年3月末現在、厚生労働省)とされています。この数字は建設業限定ではないため、採用競争の背景を確認する材料として使います。
採用費の定義表
| 区分 | 含める(例) | 明示しておくこと |
|---|---|---|
| 分子 | 求人媒体費、人材紹介料、採用イベント費、採用事務の人件費相当、教育初期費 | 何を含め、何を含めないかの定義書 |
| 分母 | 入社から12か月後も在籍している人数 | 雇用形態ごとに分けるか、まとめるか |
| 除外条件 | 会社都合の配置転換や退職の扱い、試用期間の判断 | 除外する条件と、判断する人 |
12か月定着人数の計算枠

- 12か月定着人数=入社日から12か月後も在籍している人数。
- 定着1人あたりの採用費(独自管理指標)=採用費の合計÷12か月定着人数。
- 計算は同じ定義で期間を決めて行い、値は自社のBaseline比較に使います。他社や業界平均との比較は、定義が異なるため行いません。
調査・実装の進め方
- 採用費の分子、分母、除外条件を文章で定義します。
- 12か月定着人数の数え方(雇用形態、入社日の起算)を決めます。
- 過去の採用を同じ定義で遡り、Baselineを記録します。
- 定着に影響した要因(採用経路、教育、確認者)を整理します。
- 期日を決めて再測定し、継続・修正・停止を判断します。
比較・チェック項目
採用KPIを設計するときの確認項目です。
| 観点 | 確認すること |
|---|---|
| 分子 | 採用費に含める費用の範囲が、文章として固定されているか |
| 分母 | 12か月定着人数の起算日と雇用形態の扱いが決まっているか |
| 除外 | 除外する条件が起きるたびに、誰が判断し記録するか |
| 検証 | 採用経路ごとの結果を、同じ定義でBaseline比較しているか |
若手の定着を下げている要因を確認する4点
定着人数が伸びないとき、原因を「若手の価値観」と一般化する前に、観測できる4点を確認するほうが改善に直結します。
- 仕事の割り当てが段階を飛んでいないか: 独力でできる範囲と確認が必要な範囲の区分(323の区分)より先の作業を任せていないか。区分が上がった記録が残っていない職場では、任せ方の失敗と本人の不適合が区別できません。
- 質問先と回答の速度が決まっているか: 入社直後の質問を誰が吸収するか決まっていないと、教われない時間が离職の理由になります。確認者の指名と、回答できなかった質問の記録を確認します。
- 評価の基準が本人に見えているか: 何を満たせば評価されるかが口頭だけだと、努力と評価の接続が見えません。候補者が入社前に見ていた情報(334の観点)と、入社後の評価基準が一致しているかを並べます。
- 募集時に書いた条件と実態が一致しているか: 休日・残業・仕事内容の実態が求人票と異なると、早期離職の説明として最も頻出する構造になります。版ごとの求人票と実際の勤務実態を照合します。
この4点は、定着KPIが悪化したときの切り分けの順序として使います。原因が測れないまま打ち手を変えると、KPIの変化を効果と結び付けられなくなります。
よくある質問
Q. 高卒採用と中途採用を、同じ指標で測れますか?
分けて測ります。採用費の内訳と定着の要因が異なるため、定義を混ぜると比較できなくなります。雇用形態と採用経路を分けた上で、同じ定義での期間比較に使います。
Q. 12か月定着人数は、他社と比較できますか?
分子、分母、除外条件の定義が会社ごとに異なるため、そのまま比較できません。自社のBaselineとして、打ち手の前後で比較する指標として使います。
参考文献・出典
KPIを運用するときのつまずき
- 採用費の範囲が人によってずれる: 紹介フィー・媒体費・内定者対応・教育時間を含めるかどうかで、1人あたりのコストが大きく変わります。定義表を決めて、計上ルールを固定してください。
- 定着の判定日を曖昧にする:「1年後」を入社日基準にするのか、暦年基準にするのかで数値が変わります。判定日を固定して、途中入社の扱いを決めてから運用してください。
- 数値の悪化を担当者の責任に帰す: 定着率は、採用だけでなく現場の受け入れと教育の設計の結果です。KPIは設計の改善に使うのであって、個人の評価には使いません。
まとめ
採用人数ではなく12か月定着人数を見るのは、採用の目的が「採った数」ではなく「残って働いている状態を作ること」だからです。採用費の定義と判定日を固定して、同一条件で記録を続ける。このKPIは、紹介・自社・育成という採用手段の比較の土台にもなります。採用情報の公開度を測る外部ベンチマークの例として、AIGENT ACE Equipment Intelligenceが2026年9月に1都2県の電気工事関連企業100社を観測(採用ページ解析40社)した旗艦調査では、給与明記率7.5%・Recruitment Information Score平均18.7点(最高55点)でした。詳細は旗艦レポート。
Q. 定着率が悪いとき、どこから見直しますか?
退職者の在籍期間の分布です。3か月以内が多いなら選考と期待値の設定、6〜12か月なら教育と現場の受け入れと、見直す対象が変わります。
※ 以下の出典は本記事の主題に関連する公的資料です。本文中の数値・制度名の出典として参照してください。
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