要点:国交省の令和8年3月適用設計労務単価に基づき、電工の都道府県別日当(東京34,300円等)や電線管・ケーブルの口径別歩掛を一覧整理。PDF不要で即確認でき、標準歩掛と民間見積の乖離を防ぐ現場補正マトリクスと自社歩掛の計算手順を解説します。
- この記事の結論
- 公共建築工事標準歩掛と民間お見積りで乖離が起きる4大要因
- 施工条件別歩掛補正マトリクス
対象読者:設備工事会社の経営者・積算/見積担当者
この記事の結論
歩掛表は数字をそのまま転記するものではなく、現場条件の補正率を自社実績と照合して適用する積算基準です。
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公共建築工事標準歩掛と民間お見積りで乖離が起きる4大要因
電気工事の積算で参照される代表的な基準書が、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修の「公共建築工事標準歩掛」と、それを収録する「公共建築工事標準単価積算基準」です。官公庁工事の予定価格算出を主目的とする公的基準で、工種・施工条件ごとに歩掛や市場単価が定められています。版や適用条件によって数値が異なるため、具体的な歩掛は積算時に最新版の該当表で確認してください。
ただし、民間の改修工事や中小規模の現場では、標準歩掛と実績人工が乖離する場合があります。差が生じる主な要因は、以下の4点です。
| 乖離要因 | 標準歩掛の前提 | 民間現場の実態 | 影響を受ける主な項目 |
|---|---|---|---|
| 搬入・高所条件 | 水平・垂直運搬が標準化された新築現場 | 既設ビル内の手運搬、夜間・階高差・養生制限 | 運搬歩掛、足場・高所作業の追加工数 |
| 施工規模・ロット | まとまった数量を連続施工する新設工事 | 部分改修・小ロット施工・取り合い調整多発 | 配管配線歩掛(小ロットによる割増) |
| 養生・防塵・解体 | 解体・復旧は別工種計上が基本 | 居抜き・営業中の無停電作業、防塵養生の兼務 | 付帯労務工数(未計上による持ち出し) |
| 承認・待ち時間 | 工程表通りの定常作業 | 他工種遅延による待機、元請承認待ちの断続作業 | 実働率低下(標準稼働8時間に対する実施工比率) |
※ この表は現場条件を整理するためのフレームであり、補正率の業界標準や実測値を示すものではありません。補正係数は自社の完工実績から算出してください。
標準歩掛を実務で活かすには、標準歩掛を「基準値(Baseline)」として捉え、現場ごとの難易度に応じた「自社補正係数」を積み上げる設計が不可欠です。
施工条件別歩掛補正マトリクス
現場調査時点で確認すべき補正要素を、以下のマトリクスに基づいてチェックします(本記事独自の判定フレーム。自社データで係数を検証して使うこと)。
| 判定項目 | 基準(補正なし 1.0) | 中度負荷(補正係数は自社実績で設定) | 高度負荷(補正係数は自社実績で設定) |
|---|---|---|---|
| 作業時間帯 | 日中定時(8:00〜17:00) | 早朝・夜間作業(22:00以降含む) | 深夜完全無停電・短時間制約(終電後〜始発前) |
| 作業床高 | 3.5m以下(脚立・可搬足場) | 3.5m超〜5.5m(ローリングタワー) | 5.5m超高所、狭小ピット内 |
| 改修取り合い | スケルトン新設 | 既存配線生かし改修・間仕切り変更 | アスベスト対策エリア、稼働中精密機械室 |
| 運搬動線 | 敷地内荷降ろし・EV直通 | 台車不可・階段手上げ | 養生長距離動線・搬出入時間制限あり |
自社で過去1年間の完了工事(完工粗利データ)を検証し、赤字・粗利低下が発生した現場の上記項目を再集計することで、勘に頼らない自社固有の補正基準が完成します。積算全体の進め方については「設備会社のお見積り・積算業務をAIで効率化する方法|たたき台生成から見直しまで」で工程別の分解を解説しています。
電気工事の単価表の目安:電工の地域別労務単価と代表的な歩掛
電気工事の労務費は「歩掛(人工/m)× 労務単価(円/日)」で積み上がります。「単価表を確認したい」という場面で必要になる数値はこの2種類に分かれるため、ここでも公的基準から確認できる数値を目安として整理します(いずれも版改定で変動するため、積算時は最新版の原典で確認してください)。
電工の地域別労務単価(令和8年3月適用)
公共工事設計労務単価(所定労働時間内8時間あたりの日額)の「電工」は、地域差が大きい職種です。主な地域の公表値は次のとおりです。
| 都道府県 | 電工(円/日) |
|---|---|
| 北海道 | 29,100 |
| 宮城県 | 29,900 |
| 埼玉県 | 31,200 |
| 千葉県 | 31,400 |
| 東京都 | 34,300 |
| 神奈川県 | 31,500 |
| 愛知県 | 28,200 |
| 大阪府 | 28,100 |
| 兵庫県 | 26,600 |
| 広島県 | 26,300 |
| 福岡県 | 28,900 |
| 沖縄県 | 23,700 |
※ 出典は国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価」の都道府県別単価表(PDF p.8、職種欄「電工」)。上表は12都道府県分を抜粋しています。単価は所定労働時間内8時間あたりの日額で、事業主負担の法定福利費等は含みません。東京都と沖縄県を比べると34,300円÷23,700円≒1.45倍です。
代表的な細目の電工歩掛の例(令和8年改定)
公共建築工事標準単価積算基準(令和8年改定)第3編電気設備工事から、代表的な細目の値を抜き出したものが次の表です(電工[人]。電線管・ケーブルは人/m、開閉器は人/個)。
| 細目工種 | 単位 | 歩掛(電工) |
|---|---|---|
| 二種金属製可とう電線管(F2)F17 | 人/m | 0.026 |
| 二種金属製可とう電線管(F2)F50 | 人/m | 0.073 |
| 二種金属製可とう電線管(F2)F101 | 人/m | 0.154 |
| 600Vポリエチレンケーブル(EM-CE)8sq 1C | 人/m | 0.017 |
| 600Vポリエチレンケーブル(EM-CE)8sq 3C | 人/m | 0.029 |
| 600Vポリエチレンケーブル(EM-CE)100sq 3C | 人/m | 0.112 |
| 600Vポリエチレンケーブル(EM-CE)200sq 3C | 人/m | 0.170 |
| 高圧CV(6kV EM-CE)100sq 1C | 人/m | 0.074 |
| 高圧CV(6kV EM-CE)100sq 3C | 人/m | 0.124 |
| 開閉器 3P100A(MCCB) | 人/個 | 0.708 |
※ 出典は同基準の表E1-1-1・表E1-1-6・表E1-1-7・表E1-2-16。EM-CEの値は管内配線以外の標準歩掛りです。
※ 同基準の表の注記には、施工条件による補正条項が定められています(ケーブルラック配線は電工の歩掛りを1.2倍、二重天井内・二重床内・ピット内・トラフ内配線は0.8倍、コンクリート部分へのサドル止めは2.0倍、木造部分は1.5倍など)。歩掛表を使うときは、本体の数値とこの補正条項をセットで確認してください。
歩掛×労務単価で労務費を試算して自社補正へつなげる
計算式は「労務費[円/m]=歩掛[人/m]×労務単価[円/日]」です。例えば、EM-CE 100sq 3Cの延線を東京都で施工する場合、0.112人/m×34,300円=3,841.6円/m、したがって約3,842円/mが公的数値ベースの計算例です。この数値は標準条件の基準値であり、実際のお見積りでは前節の施工条件別歩掛補正マトリクス(夜間・高所・小ロット等)を掛けて自社補正を重ね、完了工事の実績人工で検証する流れになります。
算出した労務費を材料費・諸経費と組み合わせて粗利を守る価格改定の手順は「電気工事の単価表はどう見直す?労務費・材料費高騰下で粗利を守る価格改定手順」で、積算業務全体の5段階分解は「電気工事の積算業務を分解する|どんぶり勘定から粗利を残す仕組みへの5段階」で解説しています。電工の日額と賃金統計(賃金構造基本統計調査)の関係は「電気工事士の賃金を公的統計で見る|賃金構造基本統計調査と労務単価の読み方」も参照してください。
機械設備工事編(給排水・配管)の歩掛表の読み方と管種・口径別の自社補正の考え方は「配管工事の歩掛表と都道府県別日当|自社歩掛の計算手順」で整理しています。
空調設備・ダクト工事編の歩掛表の読み方と、冷媒配管・換気設備の民間見積りへの自社補正の考え方は「空調設備・ダクト工事の歩掛表はどう使う?公共建築工事標準歩掛と民間冷媒・換気見積の補正実務」で整理しています。
歩掛算定におけるAI支援範囲と人の判断の境界線
歩掛の最適化にAIを活用する場合、金額や係数の確定をAIに委ねてはなりません。「設備会社でAIに任せてはいけない仕事|人間の判断を残す5つの基準」で整理されている通り、金額の確定と対外提出は人が責任を持つべき領域です。AIは仕様書の読み解きと類似過去案件の差分抽出を支援し、最終補正の判断は積算責任者と現場代理人が行います。
【図面・仕様書の入力】
↓
【AI支援レーン】
・過去案件データベースから類似現場の歩掛補正実績を検索・下書き
・特記仕様書からの特殊条件(夜間・防塵・高所等)の抜け漏れ抽出
・標準歩掛と過去実行歩掛の乖離フラグ立て
↓
【人の判断レーン】
・施工班の技術習熟度に応じた補正率の決定
・元請・施主との交渉余地を踏まえた労務単価・掛け率の確定
・最終見積金額の承認・対外提出
人の判断を残す仕事の基準(安全・法令・金額確定)を遵守し、AIは「下準備の工数削減」と「検討漏れの防止」に限定して配置します。
歩掛補正を実務に使うときのつまずき
- 補正率を一律「+20%」で済ませる: 現場ごとに高所・夜間・小ロットの要因が異なるにもかかわらず、一律の割増率で積算すると、競合比較で失注するか、難工事で大赤字を掘る極端なブレを招きます。
- 職長・施工班の習熟度差を無視する: 歩掛は標準的な技量を持つ電工を基準としています。新人が混ざる班編成や外注比率が高い現場では、補正を入れなければ工期遅延と追加人工の発生を止められません。
- 日報の実績人工をお見積りにフィードバックしない:「お見積りはお見積り、現場は現場」と分断されている組織では、何回工事を完了しても自社の真の歩掛基準が蓄積されず、同じ積算ミスを繰り返します。
よくある質問
Q. 国交省の標準歩掛表は民間工事でもそのまま使えますか?
官公庁工事の予定価格を積算する基準として参照できますが、民間の改修工事で実際に必要な工数は現場条件によって異なります。本記事では一律の割増率を提示せず、現場条件を記録して自社の完工実績から補正係数を算出する方法を勧めます。
Q. 自社独自の歩掛データがない場合はどこから作ればよいですか?
直近3〜5現場で「日報の作業内容・投入人工」と「図面拾い出し数量」を照合し、主要工種(ケーブル敷設、配管、盤据付)の実績工数を割り出すことから始めます。
参考文献・出典
- 国土交通省「公共建築工事標準単価積算基準」第3編電気設備工事(令和8年改定PDF) — 表E1-1-1〜E1-1-4(標準歩掛り)と表E1-1-5以降(市場単価)の区分、第2節電力設備の適用範囲を確認
- 国土交通省 官庁営繕 技術基準ページ — 標準歩掛・標準仕様書・標準図の最新版ポータル
- 国土交通省「公共建築工事標準単価積算基準(令和8年改定)」第4編 機械設備工事
- 一般社団法人日本電設工業協会(JECA) — 電気設備工事業の業界団体。工事統計・技術情報の一次発信元
- 国土交通省「公共工事設計労務単価」
- 国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価」報道発表(2026年2月17日)
- 同資料・都道府県別単価表PDF — 令和8年3月適用。電工はPDF p.8(表記「単5」)を参照。
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