要点:正社員の人手不足を感じる企業は51.3%。しかし採用を増やしても解決しない領域があります。不足の原因を「量」「偏り」「設計」の3つに切り分け、採用以外の選択肢を比較します。
- この記事の結論
- 人手不足は、いま何割の企業が感じているのか
- こんなお悩みはありませんか
対象読者:経営者・DX推進責任者・人事責任者
この記事の結論
- 人手不足には「絶対量の不足」「配置の偏り」「業務設計の欠陥」の3種類があり、採用で解決するのは1つ目だけです
- 2番目と3番目に採用をぶつけると、増えた人員が同じ非効率に飲み込まれ、コストだけが増えます
- まず切り分ける。そのうえで、採用・外注・業務設計の見直しを比較する。順序を逆にすると失敗します

人手不足の原因を正しく切り分けることが成功の鍵です。
※ この記事は 生産性が上がらない本当の理由 で挙げた3つの論点のうち、「渡せない業務が溜まっている」を掘り下げたものです。
人手不足は、いま何割の企業が感じているのか
帝国データバンクが全国2万2,350社を対象に実施した調査(有効回答1万518社、2026年7月17日〜31日)によると、正社員が不足していると感じている企業は 51.3%、非正社員では 28.8% でした。業種別で最も高いのは正社員が金融の67.1%、非正社員が飲食店の57.7%です。
つまり、2社に1社が正社員の不足を感じている状態が続いています。
ただ、この数字を見て「だから採用を強化しよう」と結論づけるのは早すぎます。不足という言葉が、まったく違う3つの状態をまとめて指してしまっているからです。
こんなお悩みはありませんか
- 求人を出しても応募が来ない。来ても条件が合わない
- やっと採用できたのに、半年で辞めてしまった
- 人を増やしたはずなのに、現場は「相変わらず忙しい」と言う
- 特定の部署だけが常に残業していて、他の部署は定時で帰っている
- 採用コストが年々上がっているのに、業務量は減らない
3つ目と4つ目に心当たりがあるなら、その不足はおそらく採用では埋まりません。
不足を3つに切り分ける
タイプA:絶対量の不足
そもそも仕事の総量に対して人数が足りていない状態です。事業が伸びていて、業務も適切に設計されている。単純に手が足りない。
これは採用で解決する唯一のタイプです。
タイプB:配置の偏り
会社全体では足りているのに、特定の部署・特定の人にだけ負荷が集中している状態。ある人が抜けると業務が止まる、いわゆる属人化がここに含まれます。
ここに採用をぶつけても、新しい人はその属人化した業務を引き継げません。引き継ぐための手順書が存在しないからです。結果、採用した人は周辺業務を担当し、中心にいる人の負荷は変わりません。
なぜ手順書があっても渡せないのかは 属人化はなぜ起きるか に、渡すときに何が抜けるのかは 引き継ぎで失敗する会社の共通点 にまとめています。
タイプC:業務設計の欠陥
同じ情報を3つのシステムに手入力している。承認のために紙を回している。電話で受けた内容を、あとからまとめて入力し直している。
こうした業務は、人を増やすと作業量も比例して増えます。2人でやっていた二重入力が、4人でやる二重入力になるだけです。
二重入力が起きる典型的な原因は、同じ数字が複数の場所に存在していることです。判定の目安は 脱Excelはどこから始めるか の5つのサインが使えます。
見分け方
| 質問 | はい | いいえ |
|---|---|---|
| その業務は、手順書を見れば初日の人でもできますか | A または C | B |
| 同じ情報を2回以上、別の場所に入力していますか | C | A または B |
| 人を1人増やしたら、処理量はきれいに2倍になりますか | A | B または C |
3つの質問で、どこに手を打つべきかが決まります。
「道具は入っているのに成果が出ない」という現実
ここで一つ、見過ごされがちな事実があります。
総務省の令和8年版情報通信白書によると、日本企業で何らかの業務に生成AIを利用している割合は 86.4% に達しました。道具は、もうほとんどの会社に入っています。
一方で、日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2025」によれば、2024年の日本の時間当たり労働生産性は60.1ドル(5,720円)で OECD加盟38カ国中28位。実質ベースの上昇率は マイナス0.6% で、38カ国中33位でした。
道具の普及率は9割近い。生産性は上がっていない。むしろ下がっている。
この2つを並べると、見えてくることがあります。足りないのは道具ではなく、業務そのものの設計です。 タイプCの会社が最新のツールを導入すると、二重入力が「最新ツールを使った二重入力」になります。速くはなりますが、なくなりはしません。
採用以外の3つの道
道1:外注する
向いているのは タイプA。業務が定型化されていて、手順書で渡せる仕事。
向いていないのは タイプB。属人化した業務は、社外の人にも引き継げません。引き継げないのは相手が社外だからではなく、手順が言語化されていないからです。
道2:業務を減らす
向いているのは タイプC。二重入力の廃止、承認段階の削減、そもそもやめる業務の特定。
見落とされやすいのですが、これは最も費用対効果が高い選択肢です。減らした業務のコストは、翌年以降もゼロであり続けます。
道3:機械に渡す
向いているのは タイプCのうち、なくすことはできないが人がやる必要もない業務。電話の一次受け、定型の問い合わせ対応、書類からのデータ抽出などが該当します。
注意点 があります。道3に進む前に、道2を終わらせてください。順序を逆にすると、なくすべきだった業務を自動化することになります。動く分だけ、廃止しにくくなります。
3つの比較
| 外注 | 業務を減らす | 機械に渡す | |
|---|---|---|---|
| 有効なタイプ | A | C | C(一部) |
| 効果が出るまで | 数週間 | 数日〜数ヶ月 | 数ヶ月 |
| 翌年以降のコスト | 継続して発生 | ゼロ | 保守費のみ |
| 属人化の解消 | しない | する | する |
| 前提条件 | 手順書がある | 現状把握ができている | 道2が済んでいる |
よくある質問(FAQ)
Q1:うちはタイプAだと思うのですが、それでも採用がうまくいきません。
A:本当にタイプAであれば、採用は正しい打ち手です。うまくいかない場合、条件面のほかに「入社後に任せる業務が言語化されていない」ことが原因になっているケースがあります。求人票に書けるほど業務が整理できていない場合、実態はタイプBの可能性があります。
Q2:業務を減らすと言われても、どれも必要な仕事に見えます。
A:「必要か」ではなく「誰の要求で始まったか」で棚卸ししてください。始めた理由を誰も説明できない業務は、たいてい既に不要になっています。特に、月次の集計資料と、二重チェックの2つは見直しの余地が残っていることが多い領域です。
Q3:3つのタイプが混ざっている場合はどうすればよいですか。
A:混ざっているのが普通です。その場合は部署単位ではなく業務単位で切り分けてください。「経理部はタイプB」ではなく「請求書の起票はタイプC、与信判断はタイプB」という粒度まで下ろすと、打ち手が具体的になります。
「結局は人を増やすしかない」という反論にどこまで答えるか
ここまでの説明で「理屈は分かるが、現場は人が足りないのだから採用が先だ」と感じる方もいるはずです。その反論のうち、最強の形はこうです。
「業務を減らす・機械に渡すというのは机上の空論だ。目の前の納期と欠員を埋められるのは人間だけであり、切り分けや棚卸しに時間をかけている間に現場は回らなくなる。まず採用で頭数を揃えるのが経営の責任ではないか」
この反論は、私たちも半分は正しいと考えます。絶対量が足りない現場に「まず設計を見直せ」と言うだけでは無責任です。実際の運用で私たちが推奨するのは、次の3点です。
- 欠員が埋まらない期間の応急手当ては否定しない: タイプAの不足がある限り、採用・派遣・外注での一時的な補充は必要です。本記事が否定しているのは「補充だけ」で終わることであり、補充そのものではありません。
- 切り分けは部署単位ではなく業務単位で小さく始める: 全社の棚卸しを待つ必要はありません。「請求書の起票はタイプC、与信判断はタイプB」という粒度で一つずつ手を打てば、採用活動と並行して進められます。
- 道2(業務を減らす)を先に片づけるのは効率のため: なくすべき業務を残したまま人を増やすと、増えた人数分の非効率が固定化します。応急の採用と並行して、なくせる業務を一つずつ消すことが、結果的に採用コスト自体を下げます。
人手不足対策の目的は「頭数を揃えること」ではなく、「少ない人数でも回る設計に変えること」です。この順序で進める限り、上記の懸念は現実のものになりません。
まとめ
- 人手不足には3種類ある。採用で解決するのは「絶対量の不足」だけです
- 属人化(タイプB)と業務設計の欠陥(タイプC)に採用をぶつけると、コストだけが増えます
- 生成AIの利用率は86.4%に達した一方、労働生産性はOECD28位・上昇率はマイナス。道具ではなく設計が課題です
- 業務を減らす → 機械に渡す、の順序を守ってください。逆にすると、なくすべき業務が固定化します
まず、自社の不足がどのタイプかを切り分けるところから始めてください。そこを飛ばした打ち手は、規模の大小にかかわらず空振りします。
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業務設計を見直した先で、実際にどこまで人の手を離せるのかを知りたい方は、電話・問い合わせ対応を例にした具体的な削減手順をまとめたこちらをどうぞ。
参考文献・出典
- 人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月) – 株式会社帝国データバンク, 2026年8月
- 労働生産性の国際比較2025 – 公益財団法人日本生産性本部, 2025年12月
- 令和8年版 情報通信白書|生成AIの業務利用状況 – 総務省, 2026年7月
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