要点:東京都の設備業界を職種別の需給と供給力で整理。建築施工管理技術者の求人倍率10.45倍、設備業者10,813社、築30年以上比率39.4%を表で示し、総合36位の内訳を読み解きます。
- 1. 職種別の需給:4職種すべてで求人倍率が全国平均を大きく上回る
- 2. 設備業者数と老朽ビル:床面積は全国最大、業者集積も最大
- 3. 保守需要圧迫スコアの内訳:人材需給49.2点が全国7位
対象読者:業界別の課題を持つ経営者・現場責任者

結論: 東京都の設備保守需要圧迫スコアは27.5点で全国36位。最大の特徴は、建物の古さでも業者の少なさでもなく「職種の人手需給」にあります。人材需給componentは49.2点と全国7位の高さに対し、老朽建物負荷は41位、設備業者負荷は37位。2.43億㎡の法人所有床面積を10,813社の設備業者が支える集積構造で、供給側の体力は相対的に厚いものの、現場で人を確保する競争だけが全国トップクラスに熱い、という読みができます。
以下、職種別需給 → 業者数と老朽ビル → スコア内訳 → 東京ならではの文脈の順に、県別データセットの実数を並べます。
1. 職種別の需給:4職種すべてで求人倍率が全国平均を大きく上回る
厚生労働省job tag(2025年)の東京都値です。
| 職種 | 求人倍率 | 求人賃金 | 従事者数 | 平均年齢 |
|---|---|---|---|---|
| 電気工事士 | 4.90倍 | 32.5万円 | 28,300人 | 38.8歳 |
| 配管工 | 9.76倍 | 34.5万円 | 14,770人 | 41.1歳 |
| 建築施工管理技術者 | 10.45倍 | 37.5万円 | 34,190人 | 42.5歳 |
| ビル施設管理 | 2.83倍 | 27.2万円 | 13,290人 | 45.6歳 |
出典: 厚生労働省・job tag職業別統計データ(2025年)。県別データセット labor(東京都行)。
見るべきは3点です。
- 建築施工管理技術者は10.45倍。4職種の中で最も高く、1人の求職者に10件超の求人が競合する状態です。
- ビル施設管理(ビルメン)ですら2.83倍。他県では1倍未満が珍しくない職種で需給が完全に売り手市場です(全国の実数比較はビルメン 人手不足の統計へ)。
- 平均年齢は4職種すべてで45.6歳以下。全国でも若い層であり、賃金水準(27.2〜37.5万円)の高さと対応しています(電気工事士の都道府県別賃金比較は電気工事士の求人賃金・都道府県ランキング、職種別の47県順位は設備人材不足が深刻な都道府県ランキング)。
2. 設備業者数と老朽ビル:床面積は全国最大、業者集積も最大
まず業者数です。2024年の設備業者数と2023年の法人所有建物の老朽化を、東京都分だけ抜き出すと次のとおりです(業種別の内訳は県別では未取得のため合計値のみ)。
| 指標 | 東京都 | 全国順位 |
|---|---|---|
| 設備業者数(2024年) | 10,813社 | — |
| 法人所有建物床面積 | 243,316千㎡(約2.43億㎡) | — |
| 設備業者1社あたり床面積 | 22,502.2㎡/社 | 37位 |
| 築20年以上比率 | 59.8% | — |
| 築30年以上比率(proxy) | 39.4% | 41位 |
| 築40年以上比率(proxy) | 20.8% | — |
| 築30年以上の床面積 | 95,906千㎡ | — |
出典: 国土交通省の建設工事施工統計(2024年・設備工事業)と法人土地・建物基本調査(2023年)から抽出した県別データセット companies / building_aging(東京都行)。築30/40年比率は1990年以前建築を築30/40年以上とみなす保守的proxy。
床面積は約2.43億㎡と、比較可能な47県の中で最大級の市場です。しかし設備業者も10,813社と最も多く集まっているため、1社あたりの受け持ち面積は22,502.2㎡/社で全国37位。老朽化率も39.4%と平均的に近く、41位です。老朽ビル比率の47県順位は築30年以上の法人建物が多い都道府県ランキングで確認できます。

3. 保守需要圧迫スコアの内訳:人材需給49.2点が全国7位
設備保守需要圧迫スコア(0〜100点・47県min-max相対値)の東京都への分解です。全国順位は設備保守需要逼迫指数を参照してください。
| component | スコア | 全国順位 | 重み |
|---|---|---|---|
| 人材需給(4職種求人倍率平均) | 49.2点 | 7位 | 20% |
| 老朽建物負荷(築30年超床面積比) | 17.2点 | 41位 | 30% |
| 設備業者負荷(床面積÷業者数) | 22.6点 | 37位 | 25% |
| 総合(利用可能重み75%で再正規化) | 27.5点 | 36位 | — |
出典: 県別データセット national_rank(東京都行)。AIGENT ACE計算による独自指数。
内訳を加重で検算すると、49.2×0.20+17.2×0.30+22.6×0.25=20.6点を、利用可能重み0.75で割り直して27.5点。つまり総合36位という中位は「老朽建物・業者負荷の低さが人材需給の高さを相当に相殺した結果」であり、採用市場の熱度だけ切り取れば東京は全国7位の逼迫地域です。

4. 東京ならではの文脈:需要は最大、供給も最大、ただし「人」だけがボトルネック
第1に、東京は供給者負荷型ではありません。老朽建物負荷が41位・業者負荷が37位と、建物の古さと1社あたり受け持ち面積の両面で全国平均より緩く、 スコアを押し上げているのは人材需給componentだけです。10,813社という業者集積が競争を通じて供給能力を厚くしている構造で、発注側としては業者選択の余地が広い市場です(東京の業者選定の実務は東京のビルメンテナンス会社の選び方で別途整理しています)。
第2に、職種間の賃金差が需給を可視化しています。ビル施設管理の求人賃金27.2万円に対し建築施工管理技術者は37.5万円で、10.3万円の開差があります。施工管理が10.45倍という需給の熱さが賃金に反映された形で、ビルメン採用は「倍率2.83倍の市場で、施工管理より10万円低い賃金提示では戦えない」ことが数値から読めます。
第3に、生産性指標は5県比較で最も厚い側です。設備工事業の元下比率は57.9%と直請け比率が高く、付加価値/人は997.2万円/人、完成工事額は1兆3,617億円(13,617,493百万円)、建設業従事者は341,905人に達します。元請け案件の厚い市場で人だけ足りない——だからこそ、採用競争ではなく業務設計と省人化で労働投入を減らす選択肢の効果が大きい、というのが東京の構造です(人手不足の構造理由はビルメンの人手不足はなぜ解けないを参照)。
5. 電気工事士の求人給与:募集25件・中央値30.0万円
AIGENT ACE求人観測(eeji・求人ボックス)による東京都の電気工事士求人の集計です。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 求人件数 | 25件 |
| 給与統計の対象(月給表記・募集下限) | 22件 |
| 給与中央値 | 30.0万円 |
| 給与p25 | 26.5万円 |
| 給与p75 | 32.0万円 |
| 給与平均 | 30.4万円 |
| 単位内訳 | 月給22件・年収2件・単位不明1件 |
出典: AIGENT ACE求人観測(eeji)による求人ボックス スナップショット。ファイル記載のobserved_at=2026-09-22はデータセット生成日(2026-09-29)時点で未来日付を含むため、確定した観測期間ではなく取得日ラベルとして扱います。前回観測(2026-09-14取得ラベル)は25件で、件数の変動はありません。
求人賃金(ハローワーク求人統計)の32.5万円と民間求人中央値30.0万円のあいだに2.5万円の差があります。公的統計のほうが高い点は、東京都の電気工事士採用では公的求人と民間求人で提示レンジが割れていることを示します。年収・日給表記の7件分(うち年収2件・不明1件)は件数集計にのみ含め、給与統計からは除外しています。
6. 経営者への打ち手
- 採用市場が全国7位の熱さなら、求人広告の増額より先に、給与以外の情報(業務内容・夜勤実態・定着データ)の開示で母集団を絞る設計が効きます。まずは採用情報の公開状況を診断するで自社の開示レベルを確認してください。
- 2.43億㎡の市場で業者が密集する東京では、受注側の会社は「対応エリアと専門領域の絞り込み」、発注側は「選定基準の明確化」が成否を分けます。
- 4職種すべての倍率が高いため、人を増やす前提の事業計画には上限があります。お見積り・報告書・電話対応など間接業務の自動化余地はAI省力化投資診断で定量評価できます。
よくある質問(FAQ)
Q: 東京都のビル施設管理の求人倍率2.83倍は、他県と比べて高いのですか?
A: 高い水準です。job tag(2025年)の都道府県別値では1倍未満の県が多数あるなか、東京都のビル施設管理は2.83倍で、他都道府県の0.25〜2.83倍というレンジの最上限に位置します。
Q: 設備業者10,813社という数字は何の集計ですか?
A: 国土交通省の建設工事施工統計(2024年・設備工事業)に基づく東京都の設備業者数(事業所ベース)です。電気・管・機械・消防・通信別の内訳は県別では取得できないため、本稿では合計値のみ扱っています。
Q: 総合36位なら、東京都は設備保守需要の圧迫が緩いということですか?
A: 一概には言えません。老朽建物(41位)と業者負荷(37位)は緩い一方、人材需給は49.2点で全国7位です。総合順位は3要素の再正規化結果であり、採用計画の立案にはcomponent別の順位を読む必要があります。
参考文献・出典
- 厚生労働省 job tag 職業別統計(電気工事士・東京都値) – 東京都: 求人倍率4.90倍・賃金32.5万円・従事者28,300人・平均年齢38.8歳(2025年)
- 厚生労働省 job tag 職業別統計(配管工) – 東京都: 9.76倍・34.5万円・14,770人・41.1歳
- 厚生労働省 job tag 職業別統計(建築施工管理技術者) – 東京都: 10.45倍・37.5万円・34,190人・42.5歳
- 厚生労働省 job tag 職業別統計(ビル施設管理) – 東京都: 2.83倍・27.2万円・13,290人・45.6歳
- e-Stat 建設工事施工統計調査 – 東京都: 業者10,813社・元下比率57.9%・完成工事額1兆3,617億円(2024年)
- e-Stat 法人土地・建物基本調査 令和5年 – 東京都: 床面積243,316千㎡・築30年超39.4%(2023年)
全国データとの関連
東京都の数字を全国他県と比べるときは、公式統計・計算値・独自指数の3層を混ぜないことが前提になります。読み分けの基準は「設備業界データの読み方」にまとめています。
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