要点:管理者・巡回員1人あたりの担当物件数(1人管理物件数)を人員ゼロ増で上げる手順。工数の測定、定型業務の仕組み化、指標管理の設計と、5物件増加で年1,200万円の受託拡大になる計算例を解説します。
- この記事の結論
- 課題:管理者が1物件に張りつくと、成長が止まる
- 仕組み・手順:人員ゼロ増で担当物件数を上げる4ステップ
対象読者:設備工事会社の経営者・積算/見積担当者

この記事の結論
1人管理物件数を上げる鍵は、管理者を「現場で作業する人」から「記録・連絡・計画を確認する人」に変えることです。まず工数を測り、定型業務を仕組み化し、件数と品質の指標で管理する。人員を増やさずに担当物件数を増やす道が見えてきます。
ビルメン管理者の物件担当モデル比較(専任常駐 vs 複数物件化)
| 評価軸 | 専任常駐型モデル | 複数物件巡回・遠隔管理モデル |
|---|---|---|
| 1人あたり担当物件数 | 1物件(中〜大規模ビル専属) | 3〜5物件(中小規模ビルの群管理) |
| 1人あたり売上貢献 | 年間 800万〜1,200万円 | 年間 2,000万〜3,500万円 |
| 日常点検・監視の手段 | 常駐員による定時メーター目視巡回 | IoTセンサー遠隔監視 + 定期巡回チェック |
| 緊急トラブル対応 | 現場にいるため即時対応可能 | 巡回班のGPS動態管理と緊急駆け付け網の構築 |
課題:管理者が1物件に張りつくと、成長が止まる
ビルメン・設備管理では、1人の管理者・巡回員が担当する物件数(1人管理物件数)が、会社の受託Capacityをほぼ決めます。しかし担当物件数が増えない理由は「人が足りない」だけではありません。
物件数が増えない構造
- 管理者が「実作業」に埋まっている: 定期報告書づくり、写真整理、連絡文面、シフト作成、点検記録の転記——これらの定型業務に管理者の時間が吸われ、新しい物件を受けられる余裕がありません。
- 1物件あたりの工数が測られていない:「この物件は重い・軽い」という感覚はあっても、月あたりの工数(巡回・事務・連絡・対応の合計)を数値で持っていない。だから受けられる上限も分かりません。
- 品質の担保が「人の目」頼み: 管理者が見回らなければ品質が下がる状態なので、増やす=事故ると同義になっています。
人員採用は難しく、賃上げ圧力は続きます(業界の採用環境は「ビルメンテナンス・設備管理の人手不足はなぜ深刻なのか」を参照)。となると、既存人員の担当物件数を上げるのが、受託拡大の最短ルートになります。
仕組み・手順:人員ゼロ増で担当物件数を上げる4ステップ
- 工数の測定: 1物件あたりの月間工数を「巡回・点検(現場)」「事務(記録・報告書・写真)」「連絡(オーナー・テナント)」の3分類で2週間測定します。物件の重さが数値で並びます。
- 定型業務の仕組み化: 測定結果の上位から、点検記録の一元化、報告書の下書き生成、写真の自動仕分け、連絡文面のテンプレ化など、定型分を仕組みに移します(個別の手法は「ビルメンの点検記録をAIで入力・管理する方法」「ビルメンの定期報告書作成を自動化する手順」参照)。
- 巡回体制の再設計: 全物件を本人が回る方式から、物件の重さに応じて「月2回現場+機械点検は月1回」のような頻度設計にします。全物件を均等に回っている状態は、Capacityの無駄です。
- 指標管理への転換: 管理者の仕事を「毎回見に行く」から「指標で監視する」に変えます。指標は例えば「定期報告書の遅延件数」「苦情発生件数」「点検記録の入力完了率」。指標が外れた物件だけ、人が入ります。
この設計では、管理者の判断と目配りは残りますが、場所と時間の拘束が外れます。これが複数物件化の技術的な前提です。
数値例:担当物件数増加が受託売上に変わる計算(試算)
計算式は「管理者数 × 1人管理物件数 × 物件あたり月額管理費」です。
管理者5人がそれぞれ3物件を担当(計15物件)している会社で、仕組み化により1人4物件に上げられたとします。物件あたりの月額管理費を20万円と仮定します。
- 現状:5人 × 3物件 = 15物件 → 月額15 × 20万円 = 300万円/月
- 改善後:5人 × 4物件 = 20物件 → 月額20 × 20万円 = 400万円/月
- 差額:月100万円、年間1,200万円の受託増(試算:100万円 × 12か月)
必要な増員は0人です。人件費ゼロで受託規模が4割増える計算です(すべて試算)。ただし前提として、1物件あたりの管理工数が仕組み化で削れていること、品質指標が外れていないことが挙げられます。数字だけ見て物件を詰め込むと品質事故になるため、指標管理が先です。
よくある失敗
- 物件数だけ増やして品質を落とす: 報告遅延・苦情増は、オーナーの解約理由になります。増やすペースは、指標が安定してから月1〜2物件程度に抑えます(目安)。
- 「根性」で増やす: 定型業務を仕組み化せず、残業で物件数を増やすと、離職(「ビルメンテナンス・設備管理の離職率はなぜ高いのか」参照)と品質低下が同時に来ます。
- 物件の重さを測らない: 重い物件に軽い物件と同じ管理者を付けると、配車や工数が崩れます。工数測定は面倒でも最初にやるべき投資です。
よくある質問
Q. 1人管理物件数を上げる最初の一歩は何ですか?
工数の測定です。1物件あたりの月間工数を「巡回・点検(現場)」「事務(記録・報告書・写真)」「連絡(オーナー・テナント)」の3分類で2週間測定すると、物件の重さが数値で並びます。「この物件は重い・軽い」という感覚ではなく数値で持つことで、受けられる物件数の上限も見えてきます。
Q. どの業務から仕組み化すべきですか?
測定結果で工数が大きい定型業務の上位から移します。点検記録の一元化、報告書の下書き生成、写真の自動仕分け、連絡文面のテンプレ化などが例です。あわせて管理者の仕事を「毎回見に行く」から「指標で監視する」に変え、定期報告書の遅延件数・苦情発生件数・点検記録の入力完了率などの指標が外れた物件だけ人が入る設計にします。
Q. 担当物件数を増やすと品質は下がりませんか?
指標管理が先でなければ下がります。報告遅延・苦情増はオーナーの解約理由になるため、増やすペースは指標が安定してから月1〜2物件程度に抑えます(目安)。数字だけ見て物件を詰め込むと品質事故になるため、指標が外れていないことを先に確認するのが前提です。
自社の状況を確認する
1人管理物件数と管理工数の構造を診断で確認し、増員ゼロで受託を増やせる余地を見えます。
出典・参考資料
- 公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会 — ビルメンテナンス業界を代表する全国組織の公式サイト(業務登録・資格・実態調査などの一次情報)
- 国土交通省 — 建築物の維持管理・省エネルギーに関する行政情報
- 巡回体制の設計・計算例は、当社の導入支援・検証業務に基づく一般的な分析(本文中の数値はすべて試算・目安)
フルスクラッチ開発との単純比較ではなく、自社標準の積算(直請・再利用前提)との比較で費用を抑える設計です。※削減率は案件の要件・既存資産の流用可否により大きく異なり、特定率を保証するものではありません。積算前提は料金シミュレーター・/price-list/の算定条件をご確認ください。自社の規模や自動化したい業務を選択するだけで、想定開発費用と手作業による工数削減効果をその場でシミュレーションできます。