要点:建築施工管理技術者では、求人倍率が高い県ほど賃金が低い傾向(スピアマン順位相関-0.41)が確認できました。設備4職種の賃金×人手不足倍率の相関を、厚生労働省job tag加工統計(令和7年度)から計算し比較した調査記事です。
- この記事の結論
- Key Findings
- 4職種の比較表
対象読者:設備工事会社の経営者・採用責任者

この記事の結論
人手不足の深さ(求人倍率)と賃金水準の関係は、職種によって逆方向に動きます。厚生労働省job tag加工統計(令和7年度)にもとづき、設備4職種について都道府県ごとの求人倍率と求人賃金のスピアマン順位相関を計算したところ、建築施工管理技術者では-0.41と「倍率が高い県ほど賃金が低い」傾向が確認できました。一方で電気工事士は+0.38と逆の傾向、配管工-0.01・ビル施設管理+0.08はほぼ無相関です。
この結果が示すのは、賃金の水準だけでは採用市場の逼迫(ひっぱく)の度合いを測れない、という事実です。なお、本記事は同一時点の県間相関の確認までを行うものであり、因果関係やその理由の断定は行いません。
Key Findings
- 賃金×求人倍率のスピアマン順位相関(県粒度・欠損県は計算から除外): 電気工事士+0.38(n=47)/ ビル施設管理+0.08(n=46)/ 配管工-0.01(n=36)/ 建築施工管理技術者-0.41(n=45)
- 建築施工管理技術者では、倍率上位の富山23.6倍・新潟21.33倍・群馬19.05倍の求人賃金が、いずれも全国値342,000円を下回る
- 建築施工管理技術者の賃金最高県は神奈川379,000円だが、その倍率は4.7倍で、埼玉4.66倍に次いで全国下位
- ビル施設管理の倍率上位は東京2.83倍・愛知2.77倍、下位は埼玉0.25倍・千葉0.30倍で、同一都市圏内で倍率が大きく分かれる
- 配管工は11県が倍率未公表のため、相関の算出は36県分にとどまる(欠損県は0で補完していない)
4職種の比較表
求人倍率・求人賃金は厚生労働省job tag掲載の令和7年度の全国値です。相関係数はAIGENT ACEが県粒度で計算したスピアマン順位相関です。
| 職種 | 全国倍率 | 全国求人賃金 | 相関係数 | 算出県数 | 倍率の欠損 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建築施工管理技術者 | 8.62倍 | 342,000円 | -0.41 | 45 | 2県(福井・鳥取) |
| 電気工事士 | 3.84倍 | 284,000円 | +0.38 | 47 | なし |
| 配管工 | 11.03倍 | 287,000円 | -0.01 | 36 | 11県 |
| ビル施設管理 | 1.03倍 | 250,000円 | +0.08 | 46 | 徳島県は行自体が欠落* |
*ビル施設管理は徳島県の行自体がデータセットに存在せず、47県中46県分での算出です。配管工の欠損11県は、富山・石川・福井・山梨・滋賀・奈良・鳥取・島根・徳島・香川・高知です。
職種ごとの読み解き
建築施工管理技術者: 倍率が高い県ほど賃金が低い傾向(-0.41)
相関は-0.41(n=45)で、4職種の中で最も明確にマイナス方向へ動きました。倍率上位3県を見ると、富山23.6倍(賃金313,000円)・新潟21.33倍(303,500円)・群馬19.05倍(331,500円)と、いずれも全国値342,000円を下回ります。
逆に賃金が最も高い神奈川379,000円の倍率は4.7倍で、埼玉4.66倍に次いで低い水準です。「倍率が高い県=賃金が高い県」という把握が、この職種では成立しないことが数値から読み取れます。この傾向が生じる理由については本記事では扱わず、「この分析で言えないこと」に記載のとおり、地域要因の検証が必要です。
電気工事士: 弱い正の相関(+0.38)
相関は+0.38(n=47、欠損県なし)で、4職種の中では最も「倍率が高い県ほど賃金が高い」傾向が明確です。ただし傾向であって、個別県は当てはまりません。倍率が最大の新潟8.41倍の賃金は254,000円で全国値284,000円を下回り、倍率上位3県(新潟8.41倍・京都5.97倍・広島5.81倍)のうち全国値を上回るのは京都298,000円だけです。
配管工: 相関はほぼゼロ(-0.01)
相関は-0.01(n=36)で、倍率と賃金に一貫した順位関係は見られません。全国倍率11.03倍は4職種で最も高い水準ですが、全国求人賃金は287,000円です。倍率上位3県(新潟25.84倍・愛媛23.28倍・三重20.16倍)の賃金は261,000円〜301,000円と、全国値を上回る県と下回る県が混在します。なお、11県が倍率未公表のため相関の算出は36県分であり、判断材料が職種内で最も限られる点に留意が必要です。
ビル施設管理: 相関は弱い正(+0.08)
相関は+0.08(n=46)です。倍率上位2県の東京2.83倍(賃金272,000円)・愛知2.77倍(268,500円)は、賃金の上位2県とも一致します。一方で同一都市圏内の埼玉0.25倍・千葉0.30倍とは倍率に10倍以上の開きがあり、県差が大きい職種です。全国値は1.03倍・250,000円で、倍率としては4職種で唯一1倍前後の水準にあります。

この分析で言えないこと
- 因果関係: 本記事の相関は同一時点の県間の順位関係を示すもので、「倍率が高いから賃金が低い」「賃金が低いから倍率が高い」といった因果は測っていません。第三の要因が両方に影響している可能性も排除していません
- 理由の断定: 相関が職種で異なる理由(母集団の事業構成・組合賃率等の地域要因)について、本記事は検証を行っていません。断定できるデータを持ちません
- 個別県の予測: 順位相関は傾向の強さを示す指標であり、特定の県の倍率や賃金の値を予測・保証するものではありません
方法論: 公式値とAIGENT ACE計算値の分離
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 公式値(元データ) | 厚生労働省job tag掲載値を加工した統計(令和7年度・year=2025)。求人倍率・求人賃金の2指標のみを使用 |
| AIGENT ACE計算値 | 賃金×倍率のスピアマン順位相関。都道府県粒度で計算し、同順位は平均順位として処理 |
計算上の取り扱いは次のとおりです。
- 欠損の扱い: 倍率または賃金が未公表の県は0で補完せず、相関の計算から除外しました
- 相関の対象: 求人倍率と求人賃金の2変数であり、就業者数などの他の指標は含みません
- 全国値: 表に記載のとおり公表値をそのまま用い、再計算はしていません
限界
- 欠損: 配管工は11県(富山・石川・福井・山梨・滋賀・奈良・鳥取・島根・徳島・香川・高知)、建築施工管理技術者は2県(福井・鳥取)が倍率未公表です。ビル施設管理は徳島県の行自体がデータセットに存在しません。算出県数が職種ごとに異なるため、相関係数の職種間比較は参考値として読む必要があります
- 加工統計の定義: 求人賃金は求人票に記載された賃金であり、賃金構造基本統計調査などの実雇用賃金とは定義が異なります。求人市場の提示水準を示す指標としてお読みください
- 1時点の値: 令和7年度の単一時点の値であり、年度間の変化や景気変動への追跡は行っていません
よくある質問
Q. 建築施工管理技術者で、倍率が高い県ほど賃金が低くなるのはなぜですか?
本分析では理由を特定できません。相関が示すのは「県ごとの倍率の順位と賃金の順位が逆方向に動く傾向がある」という事実だけで、その背景にある地域要因(母集団の事業構成・組合賃率等)の検証は本記事の範囲外です。
Q. 相関が強い職種では、賃金を上げれば採用しやすくなるということですか?
いいえ。本記事の相関は同一時点・県間の順位関係を示す指標で、因果を測るものではありません。賃金改定が倍率を変えるかどうかは、時系列データを用いた別の検証が必要です。
Q. 欠損県があると比較の精度は下がりませんか?
欠損県は0で補完せず、相関の計算から除外しています。そのため配管工の相関は11県を除く36県分の値です。算出県数が職種ごとに異なる点は、職種間で相関係数を比較する際の留意事項として「限界」に明記しています。
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